地方都市へのUターンはそれほど難しくないですが、田舎へのUターンには仕事をどうするのか、生活費はどうするのか、という困難な問題が待ち受けます。それでも、移住先として田舎へのUターンが真っ先に浮かんで来る人はラッキーです。
田舎へのUターンは難しい
田舎暮らしができるような田舎を持っていると、都会人からは蔑まれるより、羨ましいがられるほうが多くなってきた(ように感じます)。が、実際、田舎に暮らし続けるのも、Uターンするのも簡単なことではありません。
私の住む南牧村の身近な例でUターン状況を見てみましょう。1967年、68年生まれ、私の中学卒業時の同級生28人のうち、村内に居住しているのは3人ですが、Uターンは私一人です。あと二人は村を出なかった人です。28人のうち、一人は長野からの越境生、一人は亡くなくなっています。ですので26人が全体です。割合で見ますと、村内にずっと定住7.7%、Uターン3.8%、村外居住88.5%です。「Uターンの一般的傾向」のページで触れた、群馬県と比べてみますと、県内にずっと居住 46.5%、Uターン 21.5%、県外居住21.8%です。まるっきり割合が違います。
村外に出ていった人はどこに行っているのか? 県外が7人で、そのほかは主に群馬県内の都市部ということになります。県内の移動だけで県外に出なかった人もいますし、一度、東京などに出て行って、その後群馬にUターンする人もいます。でも、Uターンする場所が、群馬ではあるが南牧村ではないということです。
同じ地方圏でも都市部の出身者ほど出身市町村に戻れるが、都市部から離れた地域の出身者では、出身県に戻る場合でも、県内都市部へのJターンとなりやすいということです。 高崎市出身者は高崎市にUターンできるが、南牧村出身者は、高崎市にJターンするという感じです。
近隣の都市に移動した人や、Jターンの人たちが南牧村に愛着がないわけではありません。お盆や正月のときに、村の人口が何倍かに増えるのが妙に悲しいところです。
こうした背景には、やはり残念ながら、地元には十分な雇用の受け皿がないことが考えられます。これがないと、いくら地元にUターンの意思があってもなかなか踏み切れないというのが現状でしょう。
田舎へUターンのいいところ
それでも、田舎暮らしができるような故郷を持っている人はラッキーだと思います。都市育ちの人が、田舎暮らしを始めるよりもメリットがたくさんあるからです。田舎へのIターンに比べて、Uターンのいいところを挙げてみましょう。これらは田舎を持っている人の特権です。
土地柄を知っている
移住がうまくいくかどうかは、土地柄が合っているか、合ってるまでいかなくても自分が折り合いをつけてやっていけるかにかかっていると言ってもいいでしょう。しかしながら、土地柄は最も探りにくい難問です。
Iターン者が、自然環境や周りの施設、物件、いくら入念に調べ条件を揃えっていったとしても、土地柄が合わなければ、快適な田舎暮らしは望むべくもありません。
土地柄については人に聞くしかありませんが、当の住民に「ここの土地柄はどのようなものですか?」と聞いても「???・・・」でしょう。比較の眼を持っていそうな人に教えてもらいたいところです。探すのも一苦労の人もいますが、 そこに移住したことのある人や地元を離れた出身者、そして、嫁いできた人、他の地域から働きに来ている人、親戚がそこにいる人、そして、近隣地域の住民、役人、店員、さらには駐在所のお巡りさん、教師、一応ネットの口コミもチェック・・などなど。
でも親しくならないと本当のことは言ってもらえないかも。信頼を得るため通う、紹介者を探してみる・・・。本当のことを言ってもらえるまでこぎつけたとして、果たして、その人は妥当な判断をしているのか? その人のことも少し調べてみないと。
よし、だいたい土地柄は把握した、大丈夫!
でも引っ越し先のすぐ近くに、過度に神経質で、少し音を立てただけでも怒鳴り込んでくる、とか、酒を飲んで暴れる人がいるとか、こうしたことが起こるかも。
Uターンにはこうしたリスクはありません。だいたい予想がつきます。ここはこういうところだ、と。あそこはそういうところだ、と。何か予想外のことが降りかかってくるという不安はありません。
半面、良きにつけ悪しきにつけ、予想外のことが起こって、新たな局面になることも少ないということはあるかもしれません。
ともあれ、移住先としてUターンが真っ先に浮かんで来る人はラッキーです。移住において、もっとも大事な土地柄を考えなくてもよいのですから。そして、時間のかかる地域探しに時間を取られる必要がないのですから。
存在証明が不要
村の中でもいつもと違うところを歩いていると、「あなた何者?」と声をかけられることもあります。それぐらい、限界集落のような田舎は、顔を知らない人が歩いていると目立ちますし、警戒されます。すれ違っても、眼は追ってきます。
田舎のほうへ行けば行くほど、一人一人の存在感が出てくるので、どこから来て、何をやっていて、どういう人なのか、気にされます。それもそのはずです。これまで平穏だった村の秩序を壊すものが現れたかもしれないのですから。警戒するのも当然です。でも、同じ村の出身者だということであれば、私は危なくないですよ、と証明する必要はありません。村の出身者というだけで周りに与える安心感はまるっきり違います。
Iターンなどで田舎に入ってきた人は、妥当な理由でここにいることを周りに理解してもらわないと不安を与えかねません。森林組合で働くことになりました。農業するためにきました。地域協力隊でこの村に来ています。〇〇で店をやっています。〇〇で働いています。嫁いできました。・・・といった理由です。
のんびりしたくて、とか、大自然の中で田舎暮らしをしたくて、みたいな理由だと、なぜこの村なの? こんな何にもないところに来て変わってる、となる可能性だってあります。ここにいる理由が弱いと受け取られかねません。そんな大層な理由がなければいけないの? と思われるかもしれませんが、周りの人がどう思いがちなのか理解しておくに越したことはありません。
もちろん、日ごろの付き合いがちゃんとできて、長期に及んでいけば、警戒はどんどんなくなっていくことになるとは思います。
ともあれ、Uターンであれば、何の違和感もなく、苦労をそれほどしなくても、すんなりと田舎に溶け込んでいけます。
私の住んでいる南牧村も広いので、今住んでいるところと、実家は10キロほど離れていて、村の端と端です。なので当時は学区も違い、知っている人は全然いません。それでも、親のことを知っている人もいますし、 〇〇地区が出身でと言えば、安心して警戒感をもたれてない(と信じたい)です。
故郷の自然の力によって癒される
10年以上前の、2009年5月18日放送のカンブリア宮殿の一場面を今でも覚えています(日付は番組のサイトで確認)。
川崎和夫氏という工業デザイナーが出た回です。東京でバリバリとデザインの仕事をしていたが、交通事故で車椅子生活を余儀なくされたりして、行き詰まりに状態になってしまった。そのときに、たしか恩師だったように記憶しているが、「故郷に帰りなさい。故郷には人を元気にさせる力がある」みたいなこと言われて地元に戻ったという話です。それ以後の活躍は、カンブリア宮殿に出ていることからもわかります。
せわしない首都圏での生活や、人間関係にストレスが募って、疲れ切って、Uターンする場合だってあるかもしれません。ひとまず、実家に避難みたいな状況もあるかもしれません。
疲れきったときに、体と心を癒し、元気を与えてくれる故郷の田舎を持っているのは本当ラッキーです。地方都市よりも、田舎であればあるほどそうかもしれません。
田舎へUターンするには
田舎へUターンするには、一にも二にも、経済的な基盤を整えられるかどうかにかかっています。
いくら自然がよくても、経済的なものの見通しがなく、先細りになれば、自然を満喫するどころではなくまります。
貨幣経済の中で生活している以上、お金は必要です。何かしら稼ぐ必要はあります。でも、田舎であれば、都会のように稼ぐ必要はありません。都会型が、多く稼いで多く出費することであるとすれば、田舎型は、少し稼いで少しの出費で何とかすることも可能だからです。しかも生活の質も上げてです。
(もちろん、田舎型でも稼げる人はドンドン稼いで、雇用を作り出そうものなら、こんな素晴らしいことはないです。)
これは、まさにこのサイトのテーマでもあります。Uターンを含め、田舎暮らしを始めたい人、すでに田舎暮らしをしている人に向けて、サイト全体を通してこれから内容を深めたいと思っています。