Uターンに伴って収入は減った人が多いものの、時間面の負担も低下し、仕事全般の満足度は低下していません。生活面をみると、収入低下に伴って家計のゆとりは減る場合があるものの、居住スペースの増加、仕事時間面の負担低下から家庭生活の時間が充実し、生活の質が向上していることが、調査結果からわかります。
Uターンとは
説明不要なほど一般的になってきましたが、改めて言うと、Uターンとは、地方を出て大都市部(東京など)で生活をした後、再び地方に戻ることです。JターンとIターンとともに、移住の代表的なタイプになります。ちなみに、Jターンとは、地方を出て大都市で生活した後、生まれ育った地方近くの中規模な都市へ戻ることです。Iターンとは生まれ育った大都市部から地方へ移り住むことです。3つ揃えて、UJIターンと呼ばれたりします。
かつてUターンといえば、少し暗いイメージも伴っていました。都落ちの雰囲気です。陰口で、都会でメシが食えなくなって帰ってきたのかな、と。たしかに今も、実際にはそういうことはありますが、もっと前向きUターンについて語られることが多くなっています。一極集中の是正の機運も追い風になっています。
Uターンは単なる人口移動ではない
各市町村のホームページや広報誌などで、人口数や世帯数、その増減ぐらいは書かれていると思います。私の住む群馬県甘楽郡南牧村(かんらぐん なんもくむら と読みます)でも、人口数や世帯数、その増減は書かれています。
気の利いたところ、例えば、群馬県の中核都市である高崎市では人口移動の統計もホームページに載っています。たとえば、2018年、群馬県内と県外からの転入、群馬県内と県外への転出数がわかります。転入者の総数は1万3960人、転出者の総数は1万3121人で転入のほうが839人多いことがわかります。その中で県外からの転入者は8772人、県外への転出は8240人です。東京と埼玉の転出入が多く、それぞれ1000人を超えています。そして、甘楽郡からの転入者は118人で、甘楽郡への転出者は88人で、転入のほうが30人多いということまでわかります。
それでも、Uターンについては、出生地も絡んでくるので、さすがに、そこまでは出ていません(必要とあらば、何らかの意味ある統計は出せるでしょうが)。国関連の大規模な調査などを見てみましょう。
Uターン者の割合、全国平均20.4%
市町村単位まで細かくはありませんが、都道府県単位でならわかる資料があります。国立社会保障・人口問題研究所が出している「人口移動調査」によってです。第8回2016年の結果が出ています。それを見ると、Uターンは、全国平均で20.4%です。出生した県から県外に移動した後、再び出生県に戻った人の割合になります(県だけでなく都道府もありますが、ここでは便宜上、すべて県と表記します)。Uターン以外のものが何かと言うと、県外移動歴なし(県内にずっと居住)が44.0%、県外移動歴あり(県外居住)が26.2%となります。
群馬県で言えば、Uターンが21.5%のほかは、県外移動歴なしが46.5%、県外移動歴ありが21.8%です。Uターンと県外移動歴ありを合わせた県外移動経験者のうちで、Uターンした人の割合は、49.6%になります。県外に出てた人の半分がUターンしたということです。
ちなみに、Uターンは宮崎県がトップで30.0%、県外移動経験者のうちUターン者になっ割合は沖縄県がトップで70.9% 。県外移動歴のある人の割合トップが島根県で66.2% 、逆に、県外移動歴のない人の割合のトップが愛知県で59.0%です。
というように、Uターン者の割合、他に移動することなく県内にずっと留まる居住者の割合、出生県を離れ県外に移動した居住者の割合がわかります。そのほか、県外からきた居住者の割合などもわかります。自分の出身都道府県を見て他と比べてみると面白いです。
Uターンの理由
電通は、2017年、実際にUターン移住を経験した20〜60代の男女1714人を対象に、「全国Uターン移住実態調査」を行いました。この調査でのUターン移住者とは、出身地を出て首都圏(東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県)で生活をした後、現在は自らの意思で自分または配偶者の出身地およびその周辺で暮らしている人のことを指しています。(調査主体によって、Uターンの定義の仕方が様々ですので、少し注意は必要です。)
調査結果を分析して、Uターン移住のきっかけとして、親、ストレス、郷土愛と大きく3つの要因が影響していると整理しています。
- 第1が親ー「両親の近くに住みたくて」(24.5%)、「両親が高齢になって/病気になって」(24.4%)
- 第2が首都圏生活の魅力の低減とストレスー「首都圏はずっと住める/住む場所ではない」(28.1%)、「せわしない首都圏での生活や、人間関係にストレスが募って」(20.7%)、「首都圏での生活を一通り堪能して/一段落して新鮮さを感じなくなって」(14.3%)、「このまま首都圏にいたままでいいのかと漠然と感じて」(14.0%)
- 第3が郷土愛ー「離れてみて改めて地元の魅力を再認識して」(14.5%)、「郷土愛がつのってきて」(11.7%)
年代別に見ると、若年層は東京ストレス、働き盛り・熟年層は親の事情が多くなっていると指摘しています。Uターン者の5割以上がいずれ戻るつもりで上京していて、Uターン時の平均年齢は36.7歳という結果も出ています。
Uターンでの不安材料、仕事のこと
若者に限って、Uターンを調べた資料があります。労働政策研究・研修機構の「UIJターンの促進・支援と地方活性化ー若年期の地域移動に関する調査結果」です。若年期の移動を把握するため、対象者は25歳~39歳で、2016年に行われました。
出身県外居住者の45%がUターンの希望があることがわかります。また、Uターン者は、就職・学校卒業のタイミング(22 歳時中心)で実家に戻る移動が主となっています。ただ、新卒就職のタイミングを過ぎても、20 代は離転職や結婚を機とした U ターンが少なくない、とまとめています。39歳までの若年期の調査だとこうなるようです。
さて、Uターンに伴う仕事面の気がかりとしては「求人の少なさ」「収入低下」「希望にかなう仕事が見つからない」といった点が挙げられています。生活面の気がかりとしては、「交通の利便性」「娯楽の少なさ」などです。ただ、両方とも、半分ほどが「気がかりなし」でトップではあります。
電通の調査でも、半分ほどが「特になし」ですが、「自分が求める職種の仕事がない/なさそう」、「仕事の種類・幅が少ない/少なそう」が上位になっています。
Uターンに伴う最大の不安材料は、仕事と言ってもよいようです。
Uターン者の満足度
何らかの不安はあるけれども、実際にUターンした後の満足度は、労働政策研究・研修機構、電通、両方の調査で満足度が上がるという結果になっています。
仕事面の変化では、Uターンに伴って収入は減った人が多いものの、時間面の負担も低下し、仕事全般の満足度は低下しない。生活面をみると、収入低下に伴って家計のゆとりは減る場合がままあるものの、居住スペースの増加はもとより、仕事時間面の負担低下から家庭生活の時間が充実し、生活の質が向上していることが、調査結果からうかがえる。~労働政策研究・研修機構の調査 ~
「上京時」「移住前」「移住直後」「現在」の4つのフェーズでそれぞれの生活満足度を10点満点で聞いたところ、「上京時」は満足度8~10の「かなり満足度が高い人」が4割もいたのが、東京にいる間に27.7%まで下降。しかし、移住後の「現在」を見ると満足度の高い人は48.2%と、多くの人がUターン後に生活満足度が高まっていることがわかりました。~電通の調査~
ここまで国関連などの調査資料をもとに、簡単に内容に触れてきましたが、資料は図表も使われてわかりやすくなっていますので、一般的な傾向や、都道府県別の傾向など興味ある方はぜひ本編のほうをご覧ください。
参考資料 「人口移動調査」(国立社会保障・人口問題研究所、2016年) 、「全国Uターン移住実態調査」(電通、2017年)、 「UIJターンの促進・支援と地方活性化ー若年期の地域移動に関する調査結果」(労働政策研究・研修機構、2016年)