小中学校のとき冬の寒い時期、近くの川をせき止めて氷をはらせてスケート場にしていました。そこに滑りに行く前に、スピードスケートの刃を自分で砥石で研いで勢いよく乗り込んでいったのは懐かしい思い出です。砥石を使うのはそれ以来、40年ぶりになります。
南牧村の砥沢は砥石の名産地
南牧村にある砥沢というところは、昭和42年私が生まれる少し前までは、全国でも有数の砥石の産地でした。小学校のときもほんの少し名残りがあったように記憶しています。砥沢の砥石の採掘は16世紀半ばには始まっていたとみられ江戸時代には幕府指定の御用砥の産地として発展しました。最盛期は、砥石の採石と搬出に500人が携わっていたそうですが、平成になるころにはほとんど事業としては成り立たなくなったようです。合成砥石も普及し使われる量がなくなってしまったからです。
事業として成り立たなくても、砥石は道の駅などで買うことができました。代々採石場の経営をされていた家が出してくれていたからです。でも経営を引き継いでおられた方もお亡くなりになり今後は出てくる見込みもあまりありません。
私は、道の駅でまだ売られている時に2つ買っておきました。研ぐという作業はまだ先かもしれないとは思いつつも。しかしながら、ようやく作業にとりかかる日がきました。
田舎はどこの家にも鉈(ナタ)はある
剪定した木の枝払いや竹藪の進軍に鉈を使う必要がでてきました。どうせなら、実家で使われてない錆びたものを持ってきて研いで使いたい。何よりこの日のために、砥石を買っておいたわけですから。田舎ではどこの家でも鉈ぐらいはあります。使う機会が減ってメンテナンスもしてないと錆びているのですが、昔の鉄の刃物なので研げばまだまだ使えます。
実家で使ってなかった鉈や鎌、ハンマーの頭の部分。錆びている。鉈も鎌と同じ様な感じに錆びていたが、写真を撮る前にサビトールで何回かこすったのでこのような状態に。
錆びている鉈の研ぎ方
錆びている場合は、まず錆を落とすのが先決です。今回は、サビトールという商品があったのでそれを使いました。消しゴムのように使って錆を落とす商品です。少し調べたところでは、酢につけたあと鉄ブラシでこすって錆を落とすというやり方をしている人もいました。グラインダーはやめといたほうがいいようです。万力で固定できるなら別ですがそもそも固定できないと危ないですし、高熱で鉄が弱くなるようです。万力で固定して、変速機をかませてグラインダーを低速にして熱をあまり発しないようにしている人もいましたがまねできません。
『タイルメント・サビトール・荒目』(621円)という商品でせっせと錆び落とし。10分位でかなり錆が落ちた。今回ほどひどい錆でなければ、最初から耐水ペーパーの荒いものから始めてもいい。
サンドペーパーだとすぐに破れてしまうので、耐水ペーパーを使う。今回は150番、320番へと進んでいった。
耐水ペーパーをかけたあとの状態。だいたいのところでよしとする。
いよいよ砥石で研ぐ作業へ。砥石はまず水につけておく。
いざ、研ごう! 鉈を砥石の上にのせて
あれ、砥石の面が少し凸凹だな。これでどうやって研ぐんだっけ? 記憶をたどっても何も出てこず。
「面直ししたの?」
「・・・・」
嫁さんのほうは、道の駅に面直し用の砥石が売っていることも知っていました。
面直し砥石を購入後、作業再開です。
面直し用の砥石(ピンクのもの)で凸凹の砥石の表面を研いで平らにする。これでやっと鉈が遂げる状態に。
鉈は片刃のものです。片刃は片方にしか刃がついてないものです。鋼(はがね)と軟鉄からできていて、表面に傾斜がついているのが軟鉄側で裏面が平らな鋼側です。研ぎやすいのは両刃のものよりも片刃です。裏面は平面ですし、表面は傾斜に沿って一定の角度を保ちながら研げばいいのですから。
鋼側でない表面の刃を研ぐのが基本。表面の刃を手前にして研ぐのを主にしたのち、写真は刃を奥にして微調整。鋼の裏面は「かえり」をとる程度で軽く。表面を研ぐと先端部分の鋼がそりかえるので「かえり」という。
研いでいくと、砥石の表面にネバネバした“砥どろ”といわれるものがでてきます。このドロドロは、うまく研いで鋭利な刃付けをするために必要です。洗い流さないで、ドロドロの上に水を少しずつ加えながら研いでいきます。
研ぎ上がったところ。
鉈を研ぐのに使った道具一式
ついでに鎌も研いでおきました。片刃で鉈と同じ要領です。今度は包丁もやりだそう。研ぐ作業は道具を大切に使っている、使っていこうとする意識につながりますね。
砥沢の砥石は中砥石です。全然使ってなかったような刃物や刃が欠けているものなどは、荒砥石からしたほうがいいかもです。サンドペーパーでもそうですがざっくり修正していくなら荒いもの、緻密にしあげるなら細かいもの。鉈の場合は仕上げ砥石は必要ないでしょう。たしかによく切れるようになるが、荒々しく使うのでそのぶん刃こぼれしやすくなりますね。
– 追記 – 木を細かくしたり、竹を処理するのに活躍
この後、アンズの木(と思われれるもの)を剪定して切った木の枝払いや、竹の枝払いなどに、さっそく鉈は大活躍です。
剪定した枝など。そのままにしておいたら場所もとる。
ばしばし鉈で切っていく。太い枝の切断は剪定ノコギリで。
小さい竹を刈っていくのに最適。残しておきたい木などあるところでは刈払機の利用は難しい。
竹のほか何もないところでは刈払機を使い、残したい木があるようなところでは鉈をうまく使って残していく。
大きな竹は枝がついていると場所をとる。枝払いしてスッキリさせたい。これには鉈の効果は絶大です。
枝がなければ、活用もいろいろできる。これは、短く切断して節のところをハンマーで少し割って堆肥づくりに使う。