壊れたものをすぐに捨てていたのでは田舎暮らしは持ちません。直すとか、違ったものに再利用するとか、考えたいものです。壊れたものの修復に接着剤は強い味方です。木材だけでなく、金属、コンクリート、ガラス、プラスチック、ゴム、布と、今や接着できないものはないと言われるほど。でも、選び方と使い方を間違えると効果が出ないこともあります。靴底を接着剤でくっつけることを通して、接着について学んでみましょう。
靴底は結構はがれる
靴底がそんなに簡単にはがれるの? 簡単にはがれます。今回の一足がそうだったのですが、利用頻度が低くても年数がたったものはがれやすいようです。ほとんど使っていない登山靴を数年ぶりにひっぱりだして山登りをしようとして、出発地点から300メートルで靴底がはがれた友人もいました。
靴底の主な材質は、合成ゴムやポリウレタンで、それを接着剤で靴本体にくっつけていますが、それらが経年劣化してはがれてしまうのでしょう。大事な場面で起きないように、久方ぶりに使うような靴は、靴底がはがれることもあるということを頭に入れておきたいところです。
さておき、捨ててしまうか、専門店に修理にもちこむか、の2択では心もとない。かといって、何でもアロンアルフアでくっつけて万事解決という具合にもいきません。なぜなら、接着剤に万能タイプのものは存在しないからです。
目的と用途に合わせた接着剤選びができれば、修理はもとより、DIYの幅を広げてくれることにもなるでしょう。
接着剤の選び方
ポイントとしては、 使用場面を踏まえた上で、何と何をくっつけるかを抑えておくことが重要だそうです( でも、接着剤を選ぶのは専門家でも大変難しいらしい! )。
屋内で使用の棚を木材で作るのなら木工用ボンドという具合で分かりやすいですが、何と何と場面のバリエーションも様々です。木材と金属、ゴムと布、石と皮、プラスチックとガラス、陶磁器と発泡スチロール・・・、極寒の中、酷暑の中、湿気がある中・・・。素材が分かっていればいいですが、何の素材か断定させるだけでも労力がかかることもあるとすれば、専門家でも難しいというのは頷けます。
もっとも今は、 一般的なものであれば、ホームセンターの接着剤売り場に行けば、靴用の接着剤をはじめ、用途別の接着剤を見つけることができるので悩む必要もなさそうです。
さて現在、靴用の接着剤の成分は、変成シリコーン系のものやシリル化ウレタン系のものになるようです。これらは弾力性接着剤とも呼ばれ、衝撃に強いものです。接着剤が固まった後はゴム状になってショックを吸収します。なので、靴底の接着に適しているわけです。
今回使った接着剤。広い部分には、セメダイン社のスーパーX、細かい部分には、コニシの靴用接着剤を利用。
ちなみに、瞬間接着剤は、急ぎの接着にはいいですが、衝撃に強くないですし水にも弱いです。瞬間接着剤はゴム状のように軟らかく固まるのではなく、硬く固まるのでショックを吸収しません。なので、 靴底の接着には向いていません。
商品のパッケージには、どんな素材に合うのかや、耐衝撃性、耐熱性、耐寒性、耐水性、耐薬品性などの説明も書いてあるものも多いですから参考にしたいところです。
たしかに、用途が分かっていたり、同じ素材同士なら商品選びは難しくなさそうだが、素材の違うモノ同士をくっつける場合は? 最後に、接着剤選びに迷ったときの基本をまとめておきましょう。
- 硬いモノをつけるなら、硬く固まる接着剤を選ぶ。
- 軟らかいモノをつけるなら、軟らかく固まる接着剤を選ぶ。
- 硬いモノと軟らかいモノをつけるなら、軟らかいモノに合わせる。なので軟らかく固まる接着剤を選ぶ。
接着剤を選ぶことができれば、あとは、大体同じような流れになります。接着面をきれいにする、接着する、固定し静置する、ということです。
靴のDIY修理1、接着面をきれいにする
きれいにする仕方は、紙ヤスリをかけて、布切れやウエットティッシュ等でふいてやるというやり方をします。 接着剤が利くように、接着面に残ったゴミや古い接着剤を取り除くのが目的です。
たしかに、接着剤の説明書きにも、紙ヤスリをする、と書いてあります。が、どんな紙ヤスリをかけるとまでは書いてありません。紙ヤスリにもいろいろな種類があります。 種類とは、目の粗さの違いのことです。目が粗いものはざっくりとならすのに使い、目の細かいものは、仕上げに使います。目の粗さは番手で表し、番手が増すごとに目が細かくなってきます。
粗目 | ケバとり。素材の表面がザラザラして状態が悪い時に使う。 | #40 #60 #80 #100 |
中目 | 塗布前に使う。 | # 120 #150 #180 #240 |
細目 | 表面磨き。重ね塗りの前などに使う。 | #320 # 400 |
紙ヤスリは、はさみで切ると刃が傷むので、曲尺などでちぎるようにします。
どの番手を使うかは、はがれた表面の程度によります。きれいであれば、中目の紙ヤスリ1種類とウエットティッシュでふくだけでいいでしょうが、汚いのであれば、 番手の違う紙ヤスリ2種類ほどをかけた後、布でふき、ウエットティッシュをするぐらい必要です。
古い防水靴のほうは表面もザラザラなので、120番の紙ヤスリをした後、240番を使ってきれいにします。
表面についていたゴミや古い接着剤をとり除きました。
メッシュ靴のほうは、はがれた面もわりときれいなので、240番のヤスリのみを使用。
靴のDIY修理2、接着剤を塗る
塗る下準備ができれば、あとは説明書をよく見て、それに従えばいいだけです。接着剤によって、片面に塗るのか、両面に塗るのか、すぐに張り合わせるのか、少し放置してから張り合わせるのかなど、違います。
すぐ張り合わせるタイプは、細かい部分に使ったり、接着面を離して放置するのが難しいところに塗る。広い部分は塗るのにも時間がかかるので、放置してから張り合わせるタイプのものを使うなど、状況に合わせて使い分けでもいいでしょう。
接着剤によって、どのように使うかは変わります。説明書通りにするのが無難です。商品についていた、ヘラで両面に接着剤を薄く塗布しているところ(メッシュ靴)。
説明書に、5~10分放置し粘着性が出てきたら貼り合わせる、とある。それまで、爪楊枝で接着面がくっつかないようにしているところ(防水靴)。両面の黒い部分に接着剤が塗ってある。
接着剤が、はみ出して塗ってしまった場合や、間違って、皮膚や服などについた場合の対処法も説明書に書いてあります。
靴のDIY修理3、接着剤が固まり強度が出るまで、密着させて固定する
商品のパッケージには、「4分で硬化がはじまる」や「1~2時間で動かなくなる」「24時間以上静置する」 「24~48時間で実用強度に達する」といった時間に関する説明も書かれています。
ここで押さえておきたいのは、 「動かなくなるまでの時間」と「強度が出るまでの時間」は別ということです。もちろん強度が出るまで待たなければなりません。動かないからとすぐに使い始めて、はがれ、「この接着剤は使えない」とか「この素材は接着には向かない」と的外れな批判をしているのはよくありがちなことです。ちょっと触って動かなそうであっても、強度が出るまでの時間は、じっと使わずに我慢です、静置しておきます。
強度がでるまでは、接着面を動かさないようにして固定化します。固定の道具は、ゴムやバンド、クリップなどあるものを使います。
家の中にあった、100均で買ってあったゴムバンド、洗濯ばさみで固定。
固まりはじめる時間も、接着剤によって違います。
接着剤によって、静置の間、加圧するもの、静置だけでいいものなど種類によって違います。ともあれ、接着剤の使い方をマスターして、修理はもとより、DIYの幅を少しづつ広げていきたいところです。
参考資料 『接着基礎知識』セメダイン株式会社、『接着読本』コニシ株式会社
追記:半年後の状態。防水靴は破棄
《2019年12月10日記》
防水靴は、上記の修理後、部分的にはがれてきたところを2,3度、ボンドで修理して使っていました。しかし、一月ほど前、雨の日に使っていて、片方の靴底が完全にはがれ、靴底を持ってビショビショになりながら家に辿り着きました。全体的に、よく使い込んだというレベルであったので破棄しました。
メッシュ靴も、靴底の薄いゴムがはがれたりしたので、2,3度ボンドで修理しました。一週間ほど前に歩いていて、今度は靴底全体がはがれようとしている状態になってしまいました。
再度、靴底がはがれようとしている。
靴底がはがれたといってすぐに捨ててしまうこともありません。ボンドでつければ、靴は使い続けられます。でも、大事な場面ではがれないとも限りません。このことは頭の片隅に入れておいたほうが良いでしょう。
追記:1年後の状態。最後のDIY修理になるかも
《2020年6月17日記》
メッシュ靴、前回の修理後は、接着剤を使ってはいませんでした。散歩にしか使わななくなってきたので歩きにくくなるまで放置状態でした。後部のクッションのようなゴムのパーツはすでになくなってしまいました。これまでよく頑張ってきたという感じです。
歩行に影響を及ぼすようになってきたので、再度、接着剤でDIY修理です。
接着剤で張り合わせているところ、いたるところがペロンペロン状態。
接着剤の使い方も慣れたもの。5分~10分間放置する必要がある接着剤。
セメダイン社のスーパーXも終わりに近づいている。コニシの靴用接着剤はすでになくなっている。
このような状態の靴は、近場での散歩のときのみの使用になっています。