りんご箱を着色水性ウレタンニスで塗装する。

公開日:2019年5月14日 更新日:

収納箱を一から作るとなると時間もかかりますが、いまあるものを利用して塗装するだけで、見違えるようになります。新品のものばかり買う必要もなくなるかも。塗装の基本を一度理解しておけば様々なものに応用が利くでしょう。今回は、りんご箱を利用して試してみましょう。

ウォールナット色のウレタンニスで着色した、りんご箱
ウォールナット色のウレタンニスで着色した、りんご箱

塗料の選び方

もっとも大事なのは塗料を何にするかです。塗料の分類の仕方は様々ですが、まず見た目からしますと、「透明」と「不透明」に大別できます。

透明塗料下地を活かす塗料。ステイン、ニス、オイル、ワックス。
不透明塗料下地を見えなくする塗料。ペンキ。

下地を活かすとは、例えば木目を活かすということです。ステインは着色をしますが、色合いに変化をもたらすだけで、木目を見えなくしてしまうわけではありません。一方、ペンキは、木目を見えなくしてしまいます。

塗料についての、よく見る一般的な分類法は、水性か油性かということになるります。 ただこれについては、特殊な場合をのぞいては水性塗料がお勧めです。

水性塗料文字通り、水で薄めることができ、ハケや手についても水で洗えて、後片付けも楽、しかも臭いがほとんどない。
油性塗料 別料金で、シンナー系の専用薄め液が必要で、刺激臭もある。後片付けも薄め液を使うので面倒。

昔は、塗料といえば油性のことでしたが、水性塗料の性能が油性塗料並みになってきていますので、使い勝手と扱いやすさからして水性を選んでおけば間違いないでしょう。

塗装するモノによっては、下地をどれくらい保護するかも大事になってきます。ニスやペンキは塗膜を作って、下地を傷や汚れから守り保護してくれます。ステインは下地を保護する性質がないのでニスを上塗りすることが勧められたりします。オイルやワックスは、材を保護する性質を持ちますが、ニスのように塗膜を作らないので材の保護力では劣ります。

ともあれ、塗装するモノ、目的や狙いに応じて、塗料を選んでいくことになります。工芸作品への塗装と、屋外の物置小屋への塗装では求める質が違ってきます。 例えば、高級家具などによく見られるオイルフィニッシュは、素朴でやさしい木の風合いを残しつつ光沢を出すことができます。屋外の場合、防水性と耐久性に優れ、材を強力に保護してくれるペンキを利用することになるでしょう。りんご箱の場合、ビンテージ感を醸すために、オイルステインで塗装する方もよくみかけます。

ちなみに、家具の多くは、ステインで着色し、それに硬い塗膜を作るウレタンニスが塗られています。今回は、それに倣って、着色剤の入っているウレタンニスで仕上げてみます。素朴で落ち着き感が出るように、薄めのウォールナット色にしてみました。

もっとも、今回のりんご箱のようなものであれば、もともとの素材がいいものを使っているわけではないですし、用途も収納箱ですので、それほど保護にはこだわらなくてもいいかもしれません。

塗料は、ホームセンターの塗料売り場の前に立つと、どれを選んでいいかわからなくってしまうほど様々な種類の塗料があります。複数の性質を持つものもあります。今回利用する着色ウレタンニスは、着色とニスがいっぺんでできてしまうという具合です。塗料についての基本的なことをおさえて、目的を確認しつつ、商品の説明をよくみて、選んでいくといいでしょう。

一通り塗装の基本を押さえておきますと、他の材料への塗装でも応用が利くようになります。今回は、りんご箱を例にして丁寧に順を追ってみます。

用意するもの

りんご箱、塗料のほか、下記のようなものです。

ハケ 塗料を塗る。毛幅が5cmほど。水性用。1000円以下のもので問題ない。
紙ヤスリ下地調整に使う。60番、120番、240番、400番。230mm×280mmを各1枚づつ。 1枚50円ほど。
新聞紙下に敷く。 周囲を汚さないようにする。
ウエス布切れ。ヤスリがけの後に木の粉塵をとる。
容器塗料を入れるもの。
サンダーあると便利。ヤスリがけが楽になる。
りんご箱を塗装するために用意した主なもの。
りんご箱を塗装するために用意した主なもの。

場所の確保と決行日

一般的に、塗装で問題になるのは、道具よりも塗る場所の確保です。水性塗料だけの作業であれば、屋内でもできないことはないですが、ヤスリがけをしたときの、木の粉塵(すごいです!)、臭い(特に油性の場合)を考えると屋外が望ましいところです。屋根がついた屋外のスペースが確保できれば最高です。

あとは、天気と湿度にも注意が必要です。塗装には、湿度が低いほうがよく乾くので、向いています。天候は雨が降っていなければ、晴天に越したことはないですが、快晴である必要もないでしょう。

湿気の低い日が塗装には最適
湿度の低い日が塗装には最適

下地調整という名のヤスリがけ

素材のありようと塗料の種類によって下地調整の仕方はいろいろですが、 下地調整が必要であるということに変わりはありません。塗装の出来栄えを左右するのは、何といっても下地調整です。下地調整は、塗装する面を平らに滑らかにし、塗料が密着しやすくするのが狙いです。

美しい塗装面にしたければしたいほど、この下地調整は避けて通れない工程になります(逆に言えば、それほど求めなければほどほどでいいということです)。下地が見えない塗料を使う場合、凹みをパテで埋めるなんてこともやります。

さて、下地調整の主力は紙ヤスリです。紙ヤスリにも種類があります。種類とは、目の粗さの違いのことです。目が粗いものはざっくりとならすのに使い、目の細かいものは、仕上げに使っていきます。目の粗さは番手で表し、番手が増すごとに目が細かくなってきます。

粗目ケバとり。木材の表面がザラザラして状態が悪い時に使う。 #40 #60 #80 #100
中目塗装前に使う。 # 120 #150 #180 #240
細目表面磨き。重ね塗りの前などに使う。 #320 # 400
紙やすりは、はさみで切ると刃が悪くなるので、曲尺などでちぎるようにします。

紙ヤスリは、はさみで切ると刃が痛むので、定規などでちぎるようにします。

紙ヤスリの支え方にいろいろなあります。一番お金がかからず簡単なのは木片に巻き付けてやる方法です。紙ヤスリを固定させるための道具をつかったり、ハンドサンダー、電動サンダーなど、塗装の機会が増えればそうした工具をそろえてもいいでしょう。 さて、紙ヤスリをセットしたら、あとは、ひたすらヤスリがけです。この作業が一番きついところになります。

ハンドサンダーで下地を調整します。
ハンドサンダーに120番の紙ヤスリをセットして、下地を調整します。
サンダーに比べると多少国立は落ちるが、木片に紙やすりまいてもできる。

ハンドサンダーのような持ち手の心地よさはありませんが、木片に紙ヤスリを巻きつけても同じようにヤスリがけはできます。 ハンドサンダーでは入りにくい細かいところなどは、木片のほうが融通がききます。

電動サンダーがあれば、鬼に金棒。下地調整をする機会が多くあるなら、一台持っていてもいい。

いろんなものを塗装したい、それゆえ、下地調整をする機会が多くあるなら、電動サンダーを一台持っていても損はないです。ただ、音は出るので、すぐ横にお隣さんがあるような場合は、少し注意が必要です。集塵袋がついていますので、室内で作業ができないわけではないですが、粉塵は、手ごわく、木の表面にも残っているので、室外が無難です。

リンゴ箱のような粗い木材を使っているものだと、 紙やすりは、60番で全体のケバをとったら、120番でなめらかに、そして、240番で磨き上げるという流れでいけば、かなり念入りになります。番手を移るときは、倍以下の番手を目安にします。今回は、 120番から始めましたが、それでも十分です。

面取りをすれば、より丁寧な仕上がりになる。45度に傾けて2ミリほど角を削っていきます。

面取りをすれば、より丁寧な仕上がりになる。45度に傾けて2mmほど角を削っていきます。

刷毛と塗料の用意

しんどい下地調整が終われば、いよいよ塗装の開始です。その前に、刷毛と塗料の準備をします。周囲を汚さないように新聞紙も敷いておきます。

新しい刷毛の場合は、塗装途中で毛が抜けないように、あらかじめ毛を抜いておく。回したり(写真)、紙ヤスリにこすったりする。刷毛にも水性と油性があり、油性のほうが粘り気があるので、硬めの毛になる。今回は水性の刷毛を使用。

一度塗りと書いてあっても薄めて塗るのがポイント。粘度が落ちて塗りやすくなる。使わなくなった容器と計量スプーンで、塗料を水で半分に薄める(薄め率は適宜)。直接缶に水を入れて薄めないほうが良い。水が腐って長期保存に向かない。

塗装する

さて、いよいよ、塗装です。どのような順序で塗っていくかのイメージを最初に持っておきましょう。基本的なこととして、

  • 目立たないところ、塗りにくいところから塗る。
  • 塗る面を平らにする。
  • 木目に沿って、一気に塗る。

りんご箱では、裏面から塗りだし、真逆にひっくり返して、奥の面、正面の縁の部分、それから90度起こして平らな2面を塗る、さらに90度起こして平らな2面を塗るという具合にいけば、5回ひっくり返せば、全面塗れることになります。 りんご箱は新聞紙の上に直接置かないで、木片の上に置くようにします。新聞紙だと塗装面に張り付いてしまいます。

塗料は薄めてあるので塗りやすい。細かいことは気にせず、さっささとどんどん塗っていきます。
塗料は薄めてあるので塗りやすい。重ね塗りが前提だが、塗りムラなどの失敗は少なくなる。細かいことは気にせず、さっさとどんどん塗っていく。一番最初に、裏側から塗りだす。

塗装面が乾燥したら、400番でヤスリがけ、また塗る、を繰り返すことになります。

塗装面が乾くまで、2時間ほど(塗料や時期によって乾燥時間に違いが出る)、刷毛が乾かないように、袋に入れて輪ゴムで閉じて、乾燥を防ぐ。日をまたぐようなら、水に浸しておいてもいい。

塗りをした後の、400番でのヤスリがけ

塗装をすると木の表面が毛羽立つので、乾燥したら、400番でのヤスリがけ。

2回目の塗り

2回目の塗り。1回目に比べ塗料が木に染み込まないので、塗料の伸びがよく、刷毛運びも滑らかになる。塗料も少なく済む。塗り終わったら刷毛はビニール袋に入れる。

塗りをした後の、400番でのヤスリがけ

塗装面が乾燥したら、400番で軽くヤスリがけ 。

そのあと、3度目の塗り。回数を重ねるほど、滑らかになっていく。色も付いてくる。

計3度の塗りを経て完成。

後片付け

後片付けが楽なのが水性塗料のありがたいところです。刷毛は、よく水洗いして、日陰干しにして、乾燥させてしまっておけば、次回の塗装の時も使えます。 水洗いする前に、刷毛についた塗料を新聞紙でふき取っておけば、水洗いの時の排水の汚れも少なくてすみます。

余った塗料は、できるだけ空気に触れないようにすれば、1年ぐらいは保存できます。別の小さな容器に移し替えるのもいいでしょう。ただ、水で薄めたものは、水が腐るので使い切るようにしたいところです。

費用と時間

りんご箱はあるもの、刷毛を新品(800円ほど)で用意して、塗料で使用分(1000円ほど)、紙ヤスリ(200円ほど)、全部で2000円ほどです。ハンドサンダー(1500円ほど)があったとすれば作業が少し楽になります。

塗料を薄めて重ね塗りを前提としますと、乾燥させる時間がかかるので、仕事密度はそれほどでもないが、ほぼ朝から夕方まで一日仕事になります。

番外編、下地調整なしに塗装すると・・・

さて最後に、塗装初心者にとって一番大きな疑問。面倒くさい下地調整、それなしで塗装するとどうなるの?

これまで述べてきたことは、どのような塗装にもあてはまる、基本工程です。りんご箱は工芸品ではないし、素材をそれほど強く保護する必要もないということで、ざっくりと塗れればいい、という人もいるかもしれません。場所の確保という問題にもからんで、下地調整に敷居が高いと感じる人もいるでしょう。

試しに、下地調整なしに、いきなり、塗ってみたらどうなるか、試してみましょう。

手前が下地調整したもの、奥が下地調整なしに塗装したもの。同じ回数だけ重ね塗りをした。

下地調整なしのものは、手触りがザラザラするのと、発色がよくなく、完成品という感じはしませんが、これでも十分という人がいてもおかしくないです。塗料の吸い込みが多いので、下地調整したものよりも多くの塗料を使う感じもあります。

ともあれ、基本的なことを理解した上で、どこまで細かく作業するかは臨機応変にということになりましょう。

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執筆者:有賀知道

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