ハウスにテントウムシを放つ

公開日:2023年11月5日 更新日:

ハウス栽培は露地栽培と違って虫とは関係ないと思いきや、天敵がいないのですから一回発生すればその虫の天国と化します。

ハウスにアブラムシを食べるテントウムシを放つ
ハウスにテントウムシを放つ

アブラムシの洗礼を受ける

昨年末からハウスの半面、5月から全面を村から借りています。使い始めてからさっそくにアブラムシの洗礼を受けました。こんなにも虫がつくのかという感じです。はっきり言って気持ち悪くなります。

その後、5月末に2週間ほど作付けをやめて、ハウスを閉めきりハウス内の温度を上げるとともに、透明マルチで全面を覆って土壌消毒したりしました。

ハウスを太陽熱消毒もする:アブラムシを食べるナミテントウを施設に放つ

5月でも閉め切っていればハウス内は50℃以上になる。マルチで覆って土壌消毒、太陽熱さまさまです。

それでも、その後栽培した、シソではシンクイ虫にやられ、トウモロコシはガの幼虫にやられ、ブロッコリーの苗を育ててていたら何かの虫にやられる。たまりません。

たしかに、ハウス栽培は虫との戦いということはすぐにわかります。なにせ、天敵がいないのですから一回発生すればその虫の天国です。

なるべく虫が入り込まないようにする対策が大事ということになりましょう。

ハウスには虫が入らないようにしているが:アブラムシを食べるナミテントウを施設に放つ

入り口に防草シートをしいているのも虫が入りにくくするため。入り口に草がはえているとそこから虫がハウスの中に飛び込んできやすい。

大量のテントウムシが飛来す

話変わって、秋になるとものすごい数のテントウムシが家の中に入ってきます。5年前にこの家に住みだしてから秋の恒例行事と言った感じです。最初は、ふとん掃除機で何百匹と吸って外に放り出してましたが、やってもやっても出てくるので、どうせ冬になれば見なくなるだろうということで見てみぬふりをしていて、つい先日まできていました。

家の中にいるナミテントウを捕獲:アブラムシを食べるナミテントウを施設に放つ

天気のいい日はまあものすごい。

お風呂場にいるナミテントウを捕獲:アブラムシを食べるナミテントウを施設に放つ

風呂場の天井にもいるわいるわ。

秋の日差しが気持ちいいお昼時、畑仕事を終えて家に入ろうとしたときに気づいてしまいました。うちの家を目がけて虫の大群が飛んできているのではないのか、と。小さい虫はすぐにテントウムシだと目星がつきます。なにせこの時期、家の中にはテントウムシだらけですから。

興味がわいて少し調べてみると、やはりうちを目がけてきていることがわかりました。うちにきているのは9割はナミテントウと言われるやつだったのですが、越冬のため白い建物に集まるというではありませんか。うちの外壁、純白色ではありませんが白系統で明るい色ではあります。

ナミテントウは、4〜5月ごろに越冬明けの個体が活動を再開し、交尾し20~40個の卵を産みます。葉の裏側などで蛹(サナギ)になる。卵から成虫までの期間は約1ヵ月で、6月ごろには成虫になります。7月から9月上旬の暑い時期には見かけなくなるが、成長期間が短いため、1年に何度も世代を繰り返す。9月ごろから再び活動し、交尾・産卵を経て、新成虫が10〜11月にかけて誕生します。冬季はそのまま成虫で越冬するが、越冬のため、白い建物に集まる。集団で越冬することにより、1匹で越冬するよりも生存率が高くなるからだそう。

テントウムシ、益虫が肉食で害虫は草食

ハウスのアブラムシと関係があるのはここからです。ナミテントウ、益虫というではありませんか。どういう益虫かというとアブラムシを食べてくれる。アブラムシの寄生密度が高い場合には、ナミテントウ1匹で1日あたり100頭以上のアブラムシを食べることもあるそう。

これはすごいと思いきや、すでに生物農薬として売られています。施設野菜用に「飛ばないナミテントウ」(遺伝的に飛翔能力を欠くナミテントウ)です。

アブラムシを食べるのはいいとしても、施設内に放してもエサがなければ飛び去ってしまうため定着がなかなか難しい。そこで、自然界に存在する様々な個体の中から、飛翔能力の低いナミテントウを探しだし、それらを交配することで、遺伝的に飛翔能力を欠くナミテントウを育成して商品にしたそうです。

ちなみに、ナミテントウは(人間都合の)益虫ですが、テントウムシの中には(人間都合の)害虫もいます。ニジュウヤホシテントウが代表格です。その名の通り星の数が28です。何で害虫扱いかというと野菜の葉っぱを食べてしまうからですね。

ここがややこしいところです。テントウムシの星の数で言うと、2,4,6,7,810,11,12,13,14,15,16,19,28がいるということです。ナミテントウは星の数ではなく、斑紋で区別されています。どれが肉食で草食か・・・

現実的は、益虫のナミテントウとナナホシテントウ、害虫のニジュウヤホシテントウの区別だけでお腹いっぱいだし、うちに飛んでくるのは9割がた二つの赤紋のナミテントウなのでそれほど悩む必要もないし、かりに星が二つのフタホシテントウが交じっていても、フタホシテントウも肉食なので問題もなし。

ちなみに、何でテントウムシには肉食と草食がいるのか?

もともとテントウムシの祖先はカイガラムシを食べていたが、そこからアブラムシを食べるテントウムシと、植物を食べるテントウムシが進化したと考えられている。

『身近な虫たちの華麗な生き方』(稲垣栄洋・著、ちくま文庫)

ハウスにナミテントウを放つ

ということで、ハウスに解き放ったのは、二つの赤紋のナミテントウです。ハウス内にアブラムシが少し出ているエリアがあったので、まあ、どこかに飛んで行ってもいいので、ハウス内に放して見ることにしました。一日100匹ぐらいずつ捕獲して放出、3回はやったので300匹ははなしました。やり方は、

  • 掃除機ですう
  • 野菜ネットに移す。放出まで時間があるなら暖かいところにおいてやる
  • ハウス内で、選別。放出しながら、ナミテントウ以外のニジュウヤホシテントウなどを見つけたらバケツに入れてハウス外に放出。
ふとん掃除機でテントウムシを吸う:アブラムシを食べるナミテントウを施設に放つ

テントウムシを吸うのに使ったふとん掃除機。吸い込む力が弱いのであまりダメージを与えず捕獲できる。取り出しも楽。

効果やいかに。

追記:春に放出するほうがよかったか

<2024年4月2日記>
実は、ハウスの天井の自動換気するところのネットがはがれていて虫の外からの侵入は完全防御できていません。ということは、中にいるものも外に出られる。秋に放出したものはハウス内で越冬場所を見つけられなければ外に出て行ってしまったかも。でも3月には、栽培していたアスパラ菜にチラホラとくっついていたので多少は効果はある模様です。

上記で書いたようなテントウムシの生活史からすると、越冬準備する秋にハウス内に放出するよりも、活動再開する春に放出したほうがよかったと今さらながらです。

わが家でも先月の下旬あたりからテントウムシが目覚めてきたらしく湧いて出るように動き出してきています。これまでなら早く外に出て行ってくれないかなー というところですが、今は違います。何せ生物兵器ですから。

早速、とりあえず100匹ほど捕獲して3月29日に放出して様子を見ているところです。

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執筆者:有賀知道

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