鹿とイノシシの害獣対策で家庭菜園に防護柵+防獣ネットを設置する。

公開日:2019年11月12日 更新日:

実家の敷地内に15年ぐらい前から耕作していなかった畑があります。15坪(50㎡)ほどで家庭菜園にぴったりの広さです。来春から自然栽培による家庭菜園を始めようと思い、今秋には草を刈って、畝をつくって、緑肥作物の種まきをして準備しようとしていました。しかし、まず柵を作らなければならないことに。

家庭菜園に防護柵+防獣ネットを設置する。
鹿とイノシシの害獣対策で家庭菜園に防護柵+防獣ネットを設置する。

一面が鹿のフンに覆われていた

耕作放棄された畑を夏に2度ほど草刈りをしたときは、全然気が付つきませんでした。11月のはじめ、もう一度草刈りをしてから畑にする準備をしようと思い、元の畑に入ってみると、ゾッとしました。

案外雑草が少ないので、草刈もそれほど時間もかからないと思った。

案外雑草が少ないので、草刈もそれほど時間もかからないと思ったのですが。

耕作放棄地の一帯が鹿のフンに覆われていた。

良く見てみると、耕作放棄された畑の至る所が、このような状態。

はっきり言って、土をいじる気が失せてしまいました。まずは、鹿にフンをさせないように対策をしてからでないと。

自然農で不耕起栽培にしたいので、フンごと耕すことはしません。フンを土の中に埋めたくないです。自然農では、畝を作るときなどでも、なるべく青い草を土に埋めないようにするみたいです。青い草が地中で発酵してよくないよからです。鹿のフンにも同じ理屈の応用です。

仮に耕して堆肥をすき込むにしても、完熟のものを使えと言われます。なので、フンが完熟するまで放置しておいて、それから土いじりをすることにしました。(後で調べてみると、「しかっぴ」という鹿のフンの堆肥も売られています)。

ともあれ、新たなフンを増やさないことが先決です。

防護柵と防獣ネットをどう作ればいいか

この場所は、鹿以外にもイノシシも出没しています。猿もたまには見かけます。まずは、鹿とイノシシ対策です。

防護柵と防獣ネットを設置する場所。

写真手前のほうから、鹿とイノシシが侵入しないように、幅10mほどの防護柵と防獣ネットをつくりたい。

手持ちは、高さ130cmのロール状の軟らかそうな金網が15mほどあります。でも、これだけでは強固なものはできそうもありません。

軟らかそうな金網

軟らかい金網が15mほどあった。

ホームセンターでも害獣対策セットやら防獣ネットが売られていますが、いまひとつ力強さを感じないので、金網も活かしながら強固なものをDIY自作してみることにします。

近くのどの畑も防護柵をしているので、ちらほらと見て回ったりしました。ネットでも情報収集します。たしかにお金をかければ強固なものはできるでしょうが、お金もなるべくかからないようにしたいところです。

方針は、以下です。

  1. 鹿に、飛び越せるとは思わせない。
  2. イノシシに潜り込めるとは思わせない。

鹿に越せないと思わせるには2mは欲しいところです。イノシシ対策では、地際あたりを一工夫して、ちょっと触れても頑丈さを維持できるようにしておきたい。

仕様と用意したもの

全長10mほどの防護柵+防獣ネットをつくります。3mのメッキパイプを支柱として80cm地中に埋め込み、下部は高さ1mで 、ワイヤーメッシュと金網を張り合わせて頑丈なつくりにし、上部は、防獣ネットを高さ2m超えの位置から吊るし、高さを出すという仕様です。

構造材

メッキパイプ支柱にする。直径25.4mm×高さ3mのものを7本。1本700円ほど。購入したホームセンターでは足場資材のコーナーにあった。
ワイヤーメッシュ幅2m×高さ1mのものを6枚。15cmのメッシュ。 ワイヤー直径5mmが5枚、ワイヤー直径2.6mmが1枚(端の調整用)。直径5mmは一枚の重さ4.32㎏、2.6mmは1.66㎏。一枚500円ほど。
防獣ネット幅15m×高さ150cm。2500円ほど。
金網手持ちのもの。幅15m×高さ130cm。

補助材

U字結束線結束するために使う。ステンレス針金、18番 (1.2mm)、30m、1000円ほど。支柱パイプとワイヤーメッシュを結束。巻いてあるのでペンチなどで切ってU字にして使う。切断道具がなければ、最初からU字のものを買う。ワイヤーメッシュどうしなどはもう少し細いものでもいい。21番(0.8mm)、45cm、110本入り、ステンレス製で1000円ほど。ステンレスは強度があって錆びにくくていい。
U型ピン金網を地面に密着させるために使う。防草シートなどをとめるU型ピンを使う。30cm。20本入り。800円ほど。
S字フックパイプ上部にひっかけ、防獣ネットを吊るすようにする。あまりSのカーブがきつくないものがいい。ステンレスだと錆びにくい。20個入り1000円ほど。
作物用支柱畑で使っていた不要なものでいい。適宜。金網を地面に密着させるときに使う。

主な道具

支柱を差し込む器具「パイプヌキサシ君」直径25.4mm用。2500円ほど。地中に80cmは埋めたかったので、これがなければ大掛かりな作業になったかも。
ハッカーこれがあれば結束するときに便利。1000円ほどのもので大丈夫。シノと呼ばれる道具でもいい。
ハンマーメッキパイプの先をつぶすときに使う。金網を地面に密着させるためのU型ピンを打つ時にも使う。
水平器メッキパイプの支柱を立てるとき、垂直に立つようにみるために。特に、今回のような傾斜地ではあったほうがいい。

金網やハンマー、水平器、シノ、作物用支柱は、手持ちのものがありましたが、それ以外でかかった費用は、1万5千円ほどです。支柱パイプとワイヤーメッシュは、自家用車にギリギリやっとこ乗せることができました(配送してもらったらり、ホームセンターの軽トラを借りたほうが無難かも)。

DIY自作での作業工程

水糸もどきをはる

まず、防護柵+防獣ネットをどこに設置していくかを決めなければなりません。ここを通そうとか、ここを避けようとか、して決めていきますが、そのために、水糸もどきをはって見ながら調整すると楽です。ちなみに、水糸とは、レンガ積みやブロック、あるいは建物の基礎などを作るとき、ラインを真っ直ぐにしたり高さをピッタリ合わせるために使うものです。

トマトなどを作るときに茎を支柱に誘引するときに使うために買ってあった麻糸を10mほど切り取って水糸にします。

防護柵と防獣ネットを設置する場所に水糸をはる。

水糸もどきをはって、全体として、どのあたりに柵をつくるかのガイドとする。

支柱になるパイプの先をつぶす

支柱の埋め込みが甘いとグラグラしてしまいます。支柱がしっかりしているかどうかが防護柵の生命線です。できれば80cmは埋め込みたい。支柱を立てようとするところは、石がゴロゴロ埋まっている感じもします。パイプの先がつぶれていたほうが、差し込む力が増して良さそうです。

ハンマーで支柱パイプの先をつぶす。

何年間も使っていなかったハンマーを持ち出して、パイプの先をつぶす。

支柱パイプに、地中に埋め込む深さをマークする。

埋め込みの深さ、70cmと80cmのところがわかるようにマークする。

支柱パイプを地中に打ち込む

3mのパイプなので、80cmを地中に埋め込むとして、地上部は2m強を出す計算です。

「パイプヌキサシ君」25.4mm用。

「パイプヌキサシ君」。これがなければ大掛かりな作業になったかも。

「パイプヌキサシ君」をセット。

水糸もどきに合わせて、支柱パイプを立て、「パイプヌキサシ君」をセット。

支柱パイプは、水平器を見つつ、できるだけ垂直に立つようにする。

水平器を見つつ、できるだけ垂直に立つようにする。傾斜地では特に必要。

「パイプヌキサシ君」に体重をのせ、支柱パイプを埋め込んでいく。

足に体重をのせ、支柱パイプを埋め込んでいく。80cmのところまで打ち込む。

支柱パイプの地中への埋め込み具合を見ながら、「パイプヌキサシ君」を使う。

マークしてあった80cmのところまであと少し。

「パイプヌキサシ君」は、足を踏み込むときの角度や、特に地盤が固いところでは、スベルこともありました。いろいろな方向や高さから試したり、根気よくやり続けたら、すべて80cmは埋め込むことができました。「パイプヌキサシ君」に体重を乗せるためには、低い位置にセットするとスムースです。

「パイプヌキサシ君」は、直径が丁度ピッタリのものでないと、使い物にならないと思います。今回の支柱パイプは、直径25.4mmで、「パイプヌキサシ君」も25.4mm用のものです。26mmの支柱ヌキサシ君もあるので、購入する人は気をつけたい。

最初、水平器を当てて垂直にしていても、支柱パイプがなかなか入らないようなところだと、何回も力強く「パイプヌキサシ君」を使わざるを得なくなり、多少傾いてしまうのも仕方ありません。

ワイヤーメッシュも立てていく

すべての支柱パイプを立ててから、ワイヤーメッシュにとりかかるのではなく、支柱パイプを立てながら、ワイヤーメッシュをたてるようにします。支柱パイプのところで2枚のワイヤーメッシュを縛り付けられるようにするためです。

ワイヤーメッシュを仮当てし、間隔を確認しながら支柱パイプは立てていきます。およそ2mおきに支柱パイプを立てることになります。

U字結束線をハッカーでワイヤーメッシュを支柱パイプに縛り付けていく。

U字結束線をハッカーと呼ばれる道具で支柱パイプに縛り付けていく。

ハッカーの使い方は、ユーチューブにあげている人もいるので、それを見るとわかりやすいです。慣れてくれば簡単です。

ちなみに、支柱パイプが傷だけになっているのは、打ち込むのに難航して、何度も「パイプヌキサシ君」をセットしたためです。

金網をワイヤーメッシュにかける

ワイヤーメッシュは15cmのメッシュです。これだけですと、隙間が空きすぎているので、幼獣や小動物なんかが入ってこないとも限りません。メッシュの細かい金網を上から覆います。というよりも、思考の順序としますと、軟らかい金網がすでにあったので、それを活かすために、ワイヤーメッシュを使ったということですが。

土地は傾斜もありますし、凸凹です。ワイヤーメッシュだけだと下に隙間ができてしまいます。金網は高さ130cmあるので、高さ1mのワイヤーメッシュにかけて、下が30cmほどあまります。それで下の凸凹を防ごうという戦法です。

いらなくなった作物用支柱を地面に密着させて強化します。固定するために、U型ピンを使いましたが、これは防草シートなどを留めるときに使うものです。

金網をワイヤーメッシュの上部に引っ掛ける。

金網をワイヤーメッシュの上部に引っ掛ける。

15cmのメッシュ(格子)の隙間を金網が埋めてくれる。

15cmのメッシュの隙間を金網が埋めてくれる。

いらなくなった作物用支柱をU型ピンでとめる。

金網を地面に密着させるため、いらなくなった作物用支柱をU型ピンでとめる。

U型ピンは50cmおきぐらいにハンマーを使って打ち込んでおいた。

U型ピンは50cmおきぐらいにハンマーを使って打ち込んでおいた。

防獣ネットつるす

いよいよ最終段階です。防獣ネットを吊り下げて風でなびかないように結束すれば完了です。

防獣ネットをS字フックにかけていく。

防獣ネットをS字フックにかけていく。

防獣ネットと支柱パイプを結束する。

風で防獣ネットがそよぎすぎないように、支柱パイプと結束しておく。

設置完了

耕作放棄地の畑側から防護柵と防獣ネットを見る。

耕作放棄された畑側から見るとこんな感じ。

これで鹿とイノシシが侵入する気をなくしてくれればいいが。
これで鹿とイノシシが侵入する気をなくしてくれればいいが。

妻に手伝ってもらって(カメラマンも兼務)の半日がかりの作業でした。

防護柵・防獣ネットには補助金が出る(かも)

すべての自治体が補助金が出るかどうかわかりませんし、補助の割合も資格も自治体によって違うかもしれませんが、南牧村では柵設置には補助金が出ます(75%の補助、2019年11月現在)。

まず、ハンコを持って役所に行き、どんな資材を買うのか、その合計金額の概算を用紙に記入し申請します(ということは、この時点で買うものは大体決めておいて金額を概算で把握しておいたほうがよいということです)。設置が終わったら領収書とハンコをもって再び、役所に行き、実際に購入した資材と金額を用紙に記入し申請すると補助金が振り込まれるという流れです。

ただ、かかった費用のすべてが補助対象になるわけではありません。支柱やネット、針金、金具など構造材や補助材は補助されますが、道具は認められませんでした。後日、役場担当者による現場確認もあります。

申請の正式な流れは上記ですが、場合によっては、設置し終わった後、申請しに行っても認められることもあるようです。

追記:役場担当者が現場を確認する

《2019年11月27日記》
役場の担当者から連絡がありました。柵は確認しましたが、畑が確認できない、と。このまま補助金がおりて、もし畑にならなかった場合、虚偽申請になりますよ、と脅すではありませんか! (そうきたか、たしかに言っていることに間違いありませんが)

畑らしくなってから、申請が動き出す流れになりました。こうしたこともあるので、役所とのやりとりは(当てにする場合は特に)、余裕をもって、いろいろ確認しながら進めたほうがいいですね。

《2020年3月30日記》
役場の担当者が3月末になってもう一度畑の確認をしました。何とか畑として認められたようです。補助金を出してもらえました!

栽培計画にもとづき栽培区画をつくる。耕作放棄地を家庭菜園にする準備をする。

3月末の畑の状態。何とか補助金がおりました。

追記:土壌が固い場合、下穴を明けてから支柱パイプを打ち込む方法にする

《2021年3月15日記》
土壌が固い場合、「パイプヌキサシ君」ではまったく歯が立たない場合もあります。この場合、まず下穴を明けてそこにパイプを打ち込む方式にします。2021年、新たな畑を借りて防獣柵を設置したときに試しました。この方法なら、たいがいの固い土壌のところでも支柱パイプを打ち込むことができると思います。詳しくは 防獣柵を設置する。 です。  

追記:防獣柵のつくり方・完結編(ワイヤーメッシュ+防獣ネット版)

《2023年3月12日記》
これまで畑を広げるのにだいたい1年に1回のペースで5回、防獣柵を作ってきました。これまでのことを踏まえて仕様もだいたい決まってきたのでまとめてみました。防獣柵のつくり方・完結編(ワイヤーメッシュ+防獣ネット版) 

一番最初のつくり方で使えるものと使えないもの、必要ないものがありました。今では、ハンマーでパイプの先をつぶすこともしないし、S字フックを使って防獣ネットを吊るすようにもしていません。「パイプヌキサシ君」では歯がたたないのは、上記の追記の通りです。「パイプヌキサシ君」でいけるのはよほど柔らかい所だけというのもわかってきます。

防獣柵のつくり方・完結編 は、費用をなるべく抑えつつある程度堅固な防獣柵を作りたい人には参考になるところがあるはずです。興味のある方はご覧ください。

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執筆者:有賀知道

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