15年間の耕作放棄地から自然栽培(自然農法)による家庭菜園へ。

公開日:2019年11月26日 更新日:

来春から、自然栽培で家庭菜園(自然農法)をやろうと思っています。なぜ、田舎で自然栽培による家庭菜園なのか? いま理解しているところを整理してみます。

15年間の耕作放棄地から自然栽培(自然農法)による家庭菜園へ。
15年間の耕作放棄地から自然栽培(自然農法)による家庭菜園へ。

安心な野菜はどこにあるのか

自分で料理を少しはやるようになって思います。野菜の皮ごと食べてしまいたい。なぜなら、ピーラーで皮をむくのが苦手で面倒です。さらに、野菜の皮には栄養が詰まっているというではありませんか。

「その調理、9割の栄養を捨ててます」(東京慈恵医科大学付属病院の栄養部監修、世界文化社)に野菜の皮のことが書かれています。汚れや農薬が気になるから、かたいから、無駄な部分だと思い、野菜の皮を捨てる。あく抜きになる、苦味が取れるからと長時間水にさらす。よかれと思ってやっているこれらは、野菜の栄養を取り逃がす行為と指摘しています。

本書には、ほうれん草の赤い部分は捨てちゃダメ、 納豆はあつあつご飯で食べると栄養価ほぼゼロ、しょうがは一度加熱すると効果は30倍、なんていうことも書いてあります。

さておき、皮ごと食べるのには少し抵抗があります。特に農薬は気にする人も多いでしょう。それで、スーパーに並んでいる有機野菜に手を伸ばす人も多いかもしれません。でも、『日本農業への正しい絶望法』(神門善久・著、新潮新書)によれば、有機栽培を謳っている農作物の大半は自然環境に悪くて食味も悪いと批判しています。

技能のない農業者が有機栽培をやってもダメで、そういう人は、農薬や化学肥料を普通通りに使った慣行栽培で農作物を作るほうがまだましな場合が多いとさえ言っています。

コメについて「まともな有機栽培」「名ばかり有機栽培」「慣行栽培」の三つを比較するための実験方法も教えてくれるが、それでやると、一番早く腐るのは「名ばかり有機栽培」になると書いています。

「まともな有機栽培」の場合は、この腐敗の速度が遅い。腐敗菌が入ってきても、コメの中にある微生物と共存するため、腐敗菌だけが増殖するという事態にならないからだ。それに対し、「慣行栽培」は農薬などで他の微生物が殺されているので腐敗菌が増殖しやすく腐敗が速い。
だが、「名ばかり有機栽培」は、「慣行栽培」よりもさらに早く腐敗する。「名ばかり有機栽培」でも農薬は使っていないから、コメの中には微生物がいるにはいる。しかし、それ以上に窒素過多で育ったため、コメの細胞が弱っているのだ。

窒素自体は植物にとって栄養だが、多すぎても害悪になると説明しています。

ともあれ、今の時代、あまり神経質になるとやってられなくなりますが、できうるならば、状況が許すならば、安心できるものをと誰もが望むところでしょう。もしも、自分で安心なものをつくれれば、この上なしです。

自然栽培の難しさは、自然相手の難しさと、そして商売にする難しさ

有機栽培と自然栽培の違いもよく判らない人も多いのが現状かもしれません。それでも、農薬も肥料も使わない自然栽培、そんなことできるわけない、という状況ではなくなってきているようです。これも、奇跡のリンゴの木村秋則さんに負うところが大きいでしょう。

木村さんの栽培法を説明しようとした『すごい畑のすごい土』(杉山修一・著 、幻冬舎新書)では、他の栽培法と比べて、木村さんの自然栽培を下記の表のようにまとめています。木村さんは、有機栽培と放置栽培の間の狭い領域に自然栽培という道の分野を開いた、と説明しています。

慣行栽培化学肥料と合成農薬を使った通常の農業
有機栽培化学肥料と合成農薬を使わずに、認可された有機資材だけを使って栽培する農業
自然栽培化学肥料と合成農薬を使わずに、生物の力を使って栽培する農業
放置栽培化学肥料と合成農薬を使わずに、作物を植えて何もしないで収穫を待つ農業

有機栽培と自然栽培は近しい感じも受けますが、根本的な違いがあります。『すごい畑のすごい土』ではリンゴ栽培のゲームに例えて説明しています。

このゲームでは、雑草、昆虫、微生物のすむリンゴ園にリンゴを実らせたら勝ちです。「緑の革命」に由来する慣行栽培は、生産者が中心的プレーヤーとしてゲームを支配します。

化学肥料や合成農薬をまいて、リンゴ園の生き物を殺すことでゲームを成功に導く。

ここで、大事なものは、化学肥料と合成農薬です。この装備を備えていれば、誰でもゲームで成功することができます。
しかし、この栽培法では装備があまりにも強力なため環境に悪い影響を与えるので、装備をより自然な素材にしたのが有機栽培です。

装備が自然な素材になる分、ゲームで勝利する効率は慣行栽培にはかなわない。でも、慣行栽培と有機栽培は、生産者がゲームの主要プレイヤーであることには変わりありません。

これに対し、自然栽培は、プレイヤーではなく監督としてゲームに参加するということになります。ゲームのプレイをリンゴ園にすむすべての生き物に任せるスタイルです。上記の表の「生物の力を使って栽培する農業」となるわけです。

生物の力は、自然状況によってさまざまなので、それを観察した上で対処しないといけません。なので、ゲームで勝利する効率は有機栽培よりもさらに悪くなります。ちなみに、放置栽培は、監督もせずただ傍観するスタイルです。ゲームに勝つことはできないと説明しています。

自然栽培は、一様ではない自然を踏まえるので、対処の仕方も様々になるので難しい。どのような状況でもうまくやろうとすれば、農薬と肥料で管理するということが一番効率的になるということです。

難しいという状態は、計画しづらい状態ということです。計画しづらいということは商売になりにくいということです。リンゴの自然栽培は作物の中でも最も難しい部類だそうですが、 難しさを少しでも克服するには木村さんのように技能を上げるのが王道です。

もう少し難しくない作物をやるにしろ、自然栽培が一般的になっていない現状において、商売ベースに乗せられる人はまさに称賛に値します。

家庭菜園ならリスクなし

自然栽培を商売ベースにもっていくのは、自然相手と、マーケット相手のダブルの壁を乗り越えなければなりません。でも、商売にしなければ、自然相手の壁だけを相手にすればいいことになります。 その上、商売にしなければリスクも(ほとんど)生じません。

売るわけではないので、見てくれが悪くても、虫食いであっても、変な形のものができても何の問題もありません。

売るわけではないので、収穫できる量が少なくても、何も問題ありません。

売るわけではないので、時季外れでも問題ありません。

そして、たとえ失敗しても、作物は買ってくればいいだけの話です。

自然相手の壁と言っても、うまくできれば儲けもの~商売ベースを目論むまで、自分の状況に応じてエネルギーをかければいいだけのことです。家庭菜園をやるなら、そして、自然栽培に合う環境を手に入れられるなら、自然栽培に取り組みたいと思う人はけっこういるのではないでしょうか。

自然栽培に適した自然の土地が山間部の田舎にはある

自然栽培のほか、自然農や自然農法、天然農法など、さまざまな種類があり、それぞれやり方は少しずつ違うようですが、無農薬と基本的に無肥料で、状況をよく観察しながら、自然界(生物)の力を活かして作物を育てていくということでは同じ括りだと思います。

自然界の力を活かすには、山間部の田舎はピッタリです。

  1. 生物多様性がある。
    山間部は自然にあふれています。動物や植物、雑草、昆虫、微生物など量も質も圧倒的です。 畑や家庭菜園はその自然の中にあります。都会のように自然から孤絶した農園や家庭菜園とは違います。自然と切り離されているところでは生物の力を活かしにくいです。山間部は自然界の力を活かしやすい環境です。
  2. 耕作放棄地だらけ。
    耕作放棄地は今やどの田舎でも問題です。いや、日本全体の問題と言ってもいいかもしれません。草ぼうぼうの耕作放棄地を慣行栽培の畑にするのは大変かもしれませんが、自然栽培にするなら逆に適しているとさえ言えます。放棄されてから年限が経つほど、農薬や肥料が抜けて、生物の営みも活発になっているからです。慣行栽培の畑を自然栽培の畑にするよりもいい。しかも、田舎であれば、畑はタダ同然で借りられます。

現在の日本では、農村人口の高齢化により山間地にある農地がどんどん放棄されています。しかし、このような場所は周辺に自然が残っており、生物多様性が高いため、慣行栽培には不向きでも、自然栽培には適地となります。

生物多様性があるほうが自然栽培に向くと、『すごい畑のすごい土』にあります。しかも、生物多様性があるほうが生産性があがることが説明されています。

山間部では、生物多様性があるということで、一番の問題は、鹿やイノシシなどの害獣対策です。広い範囲を防衛しようと思えば大変な労力です。しかし、家庭菜園ぐらいの広さであれば、何とか防衛できるのでないでしょうか。

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執筆者:有賀知道

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