品目ごとに一年じっくり記録を作っておけば、それを踏まえて来年はより洗練された予定が、エクセルのシートをコピーしたものを土台にして簡単に作れます。そして再来年はさらによりよく・・・と続く(予定です)。
品目ごとに管理
広告会社に勤めていた20年以上も前の話になりますが、一代で巨大小売りを築きつつあった方に「うちがいいのは単品管理がよくできているからだよ」と教えてもらったことがあります。単品管理?? 単品で管理するのはそんな難しいことなのか? 単品で管理しないで何で管理するのか? 巨大小売のことをまったくわかってないな、と思われたでしょうが、かみ砕いて教えてもらいました。
たしかに、小売業が扱う商品数は膨大です。いまのようにコンピューターが発達していて雛形になるようなシステムがあふれていればいいでしょうが、当時はまだそれほどでもなく、単品管理の緻密な設計を自らがして、その上でシステム会社に指示して作らせることが必要だったわけです。この緻密な設計こそが、そしてそれが実際に機能していたことが他社よりもすごかったということです。
それはさておき、栽培についてです。最初は、ブログ上で栽培の仕方なんかをまとめておけばいいかな、ぐらいに考えていました。でも、役立てようとすると、管理も難しいし、閲覧性が悪いし、使い勝手がよくありません。しかも書いておかないといけないことが山のようにあります。栽培品目を広げられるほどの実力もまだないので、少なめにしようとしますがそれでも、自家消費のゴーヤの2株~小麦や大豆~販売用の花卉のスターチス100株とブルーグロー(エキノプス)150株、加工用に提供するシソ200株、まで40種ほどが今年の栽培です。
ここは、単品管理の採用です。小売りに比べれば扱う品目数はバカバカしいぐらいのものですが、それでも整理していかないとゴチャゴチャ街道まっしぐらです。
エクセルを使うことにします。
品目ごとに、すでにやったことについてはいつ(日付)、どこで(場所)、何をどのように(内容)、なぜ(意味)を必要に応じて書き込み(参照文献や誰が言ったのか書いておく)、あとで振り返ってその評価・来年気を付けることがあれば書いておく。これからやるべきことについても、ある程度の日時を想定して前もって書きいれておく(予定表になる)。
1年じっくり記録を作っておけば、それを踏まえて来年はより洗練された予定が、エクセルのシートをコピーしたものを土台にして簡単に作れます。そして再来年はさらによりよく・・・と続きます。閲覧性もいいし、使い勝手もいい。そして何より、年々技能が増していくという寸法です。
と、うまくいくかどうかはわかりませんが、栽培は、一発勝負ではなく、長期戦を覚悟しておいたほうがいいのは間違いないようです。一番力が身についていきそうなのは、実際にやって復習、記録を作っておくことだと思っています。
これまでの、一応計画表みたいなものはあるが、中心は手書きのメモで仕事をやっつけていくのとはスタイルがだいぶ変わっていきそうです。
技能を高めていくことにしよう
そんな記録までして、なぜ、技能なのか?
うまくて体にいいものを栽培しようとするなら技能が必要らしいからです。どうせつくるなら、そうしたものを栽培したいですし、それを食べて気分も良しです。
うまくて体にいいものを栽培することが簡単でないことはすぐに現実でわかります。動物にも虫にも、菌にもやられます。防獣柵や農薬でかなり防げるでしょうが、農薬を継続的に多投するのも気が引けます。肥料をやっておけばうまいものが出来るというわけでもありません。有機栽培とかのラベルだけで、うまくて体にいいと信じ込んじゃう人もいるでしょうが、そんなこともないのが面白いところです。
『日本農業への正しい絶望法』(神門義久・著、新潮新書)には、日本の農業はほとんど手遅れ状態だが、それでも「技能こそが生き残る道」と説きます。マニュアル依存型大規模農業だけでなくマニュアル依存型小規模農業との対比においてもです。マニュアル依存型がダメだとか悪いということではなく必要であるけれども、他国に比べて日本の強みにはならないという指摘です。
もともと日本には優れた耕作技能があった。うまくて安全な作物を自然環境と調和しながら作る技能があった。ところがその技能がどんどん死滅していると嘆きます。
現状は、よい農産物を作るという魂を失い、宣伝と演出で誤魔化すハリボテ農業になっている。それは、既存農家か新規参入か、大規模農家か小規模農家か、有機栽培か慣行栽培か、老若男女関係なしにです。
もっとも、それは農業者だけの責任でもなく、なにせ耕作技能を磨いてよい農作物をこしらえたとしても、消費者の舌が愚鈍化したため、良しあしがきちんと評価されないことも原因と指摘します。
さて、技能を持つとどうなるか。技能抜群の名人の話がのっています。
農業団体の集会で会員農家が持参したアスパラガスを試食してみんな「おいしい」と言ってる中、名人だけは「このままでは来年以降が駄目になるよ」と、ハウスの中の土の状態やら、それまでの生育状態とかを言い当て、早急に取るべき対策を指示したと言います。まさに「達人の見るなまこは大したもの」です。
そうなるには、伝統的なものを無自覚に踏襲するだけでなく、生物化学の基礎知識もみっちり勉強していたということです。
収穫物を食べただけで農地の状態を言い当てられる名人級にたどり着けなくても、畑の土を見て、虫を見て、生えてる草を見て、水の流れ、風の流れ、地形なんかの畑の状況を見て何をどうつくればよさそうか、ぐらいの話はできるようになりたいところです。少しづつでも技能を高めていこうと思います。
マニュアル依存型が効率よく発揮されるような平地が山間の畑では少ないという事情もあります。もちろん、技能を磨いて日本の農業をナンチャラカンチャラでもありません。