村に残っている数少ない小中学校の同級生から、自分の敷地にある柿をもいでもらってきました。「たぶん蜂谷柿だんべぇ」。ということで干し柿にしてみました。
美味しんぼに触発されて
群馬テレビで「美味しんぼ」の再放送を最近までやっていました。たしか9月頃だったと思いますが、やっていたのが「お菓子対決」でした。
「至高のメニュー」「究極のメニュー」ともに「柿」を出していました。とくに「至高のメニュー」の海原雄山は、砂糖を使わない『干し柿』を菓子の基本と捉えてです。
これを見てしばらくたってましたが、まだ記憶に残っていたので、同級生が家の柿の木から柿をもいできてくれて、「もって行く?」と言えば、断る理由など何もありません。
聞けば渋柿で干し柿に向いている品種ということです。作り方も教わってきました。
干し柿の作り方
熟し具合がバラバラだが10個ほどもらってきた。
ヘタとヒダを切り落とす。ヘタには縄をつけてつせるようにする。
包丁で、ヘタの周りの皮をぐるりと剥いて、 残りはピーラーを使って剥いていく。
お尻の皮は少し残しておく。こうすると吊るした時に汁がもれにくくなるらしい。
10個ほどなので、洗濯物干しに吊るす。風通しも日当たりもいい場所。柿同士がくっつきにくいように上下にずらしておく。くっつくとカビが生えやすいそう。
10日ほどたったとき。表面が乾いた状態になってきている。もむと仕上がりが柔らかくなるというので、この後も何回かもむようにした。
一か月後、ちょっと固くしすぎた感じ。固めが好きなのでこれでよし。
水分の多いものが食べたければ、早めにどんどん食べてしまえばいいでしょうし、乾燥して固めのものが良ければ長く干しておく。好みと状態を見ての判断です。
渋柿が甘くなるわけ
田舎で作物をつくっていて一番の心配は動物による食害です。魅力あるものであればすぐに狙われてしまいます。
しかし、人の心配をよそに植物のほうも全部食べられてしまえば種の絶滅につながってしまうので、生き残れるような仕組みを少なからず持っています。そう気づかせてくれたのが『植物はすごい』(田中修・著、中公新書)です。
同書の中に、渋かったり苦いなど不味ければ動物に食べられないという話が出てきます。渋柿が例で取り上げられています。
柿の渋みの成分はタンニンという物質です。渋柿というのは、タンニンが果肉や果汁に溶け込んでいるカキです。
果肉や果汁に溶けているタンニンには、溶けない状態の「不溶性」に変化する性質があります。タンニンが不溶性の状態になると、タンニンを含んだカキの果肉や果汁を食べても、口の中でタンニンが溶け出してこないので、渋みを感じることはなくなります。果肉や果汁に溶けているタンニンを不溶性の状態にすることを、「渋を抜く」と表現します。
タンニンを不溶性にする物質がアセトアルデヒドです。酒飲みには馴染みの物質です。飲んだ後に体内に吸収されて血液中に入る物質です。
柿の実の中で種ができあがってくるにしたがってアセトアルデヒドがつくられてきます。これによって、タンニンが不溶性に変わった証が、黒いゴマののようにみえるものです。見てくれは悪くなりますが、黒い斑点が多いカキの実ほど渋みは消えているというわけです。
こうして、渋いカキは自然に甘くなります。カキの実は、タネができる前の若いときには、虫や鳥に食べられないように渋みを含みます。タネができあがってくると、鳥などの動物に食べてもらえるように甘くなりタネを運んでもらいます。
人為的に渋柿から渋を抜くこともできます。カキの実も呼吸をしているので、それを止めてアセトアルデヒドを発生させてやるというのが方法です。お湯や焼酎につける方法などでです。
昔からの生活の知恵では、アセトアルデヒドを知らなくても甘くなることをやっていました。そうです、干し柿にすることによってです。皮をむいて干すと、果肉の表面が堅く分厚くなります。そのため、空気が実の内部に入らないので、呼吸ができなくなりアセトアルデヒドが発生する。干し柿畏るべしです。