人の数より獣の数のほうが多い田舎では、「作物を作る」と「防獣柵を設置する」はセットと考えなければなりません。今度畑を借りるところの端のほうには、真竹の細いのが幅をきかせています。これを避けて通ることはできなさそうです。
竹やぶを開墾
田舎のあちこちで竹やぶが暴走しているのを目の当たりにすると、この畑も占領されてしまうのかと不安がもたげてきます。もう畑を実際に使えるようになる前から、竹をどう駆逐していくのか気にかけていました。
最初に誰に聞いたか定かではありませんが、「1m切り」すればいいよ、と教えてくれる人が何人もいました。竹は切られたことに気づかずに、養分をどんどん吸い上げてしまいには枯れていくんだよ、と説明してくれる人もいます。
冬の寒い時期(12~2月)に竹を地上1mの高さで切っておく。するとその竹は、春になったら切り口から溢れるほどの水を吸い上げ、根の貯蔵養分を浪費する。その後は切った竹はもちろん、地下茎まで枯れてしまうというものだ。
『農家が教える竹やぶ減らし』(農文協・編、2022年)
その後読んだ同書でたしかに、竹やぶ減らしの有力な手法として紹介しています。
いまは2月、1m切りにするのはちょうどいい時期です。でも、細い竹が密集しているところでこれをやると、歩きに行くいわ、危ないわ。
1m切りはしばし忘れて、何はともあれ、刈払機で刈り取ってしまわないと防獣柵を作るにも先に進めなそうです。待てよ、ところどころにお茶の木があります。前回の記事で書きました。畑のはしにある、お茶の木を発見
お茶の木を切ってしまいそうなところは、刈払機でなく、鉈で刈り取っていくことにします。鉈の用意もできています。錆びた鉈(ナタ)を砥石で研ぐ
すっきりです。
お茶の木を残して、竹をバッサリいっておきました。
身近にありながらまったく知らなかった竹の特徴
ここまでは別段難しいことはありません。半日もあればできてしまいます。問題はその後です。どのように管理するかです。方針を立てる前に、まずは相手を知っておかないとです。
1m切りにして養分を使わせるにしても、竹の生育リズムを理解しておかないとうまく浪費させられないし、応用もききません。
竹のことをどれだけ知らないかがはっきりしたのは、竹関連で一番最初に読んだ『野山・里山・竹林 楽しむ、活かす』(農文協編、農文協、2009年)の時です。竹は2カ月以内で伸びきってしまい、あとは何年たっても、どれだけ肥料を与えても太らない。そうだったのか! この本では、穂先タケノコで活用しなおかつ管理も一緒にしてしまおう、という話を聞けたのは幸いでした。こういうやり方もあるのか!
ということで、竹やぶを減らすだけでなく、活用もイメージすべく『特産シリーズ たけのこ』(野中重之・著、農文協、2010年)です。でも活用のイメージは、『農家が教える竹やぶ減らし』のほうが私的には参考になりました。逆に、竹の特徴をコンパクトに説明してくれるのは、『特産シリーズ たけのこ』のほうです。
相手を知って、適切に対応できれば畑が竹で占領されてしまう不安は見事なくなりました。『特産シリーズ たけのこ』で頭に入れておこうと思ったところ。
- 1年生の竹は、葉替わりしないまま越冬し、翌2年目の4月中下旬にいっせいに落葉する。新たな葉によって7~9月を中心に盛んに光合成を行って養分を作り出す。10月以降は枝葉から稈(かん)、さらに地下茎へと養分を還流し、これが地下茎に蓄えられる。翌3年目の3~5月、この養分がタケノコ発生のエネルギーになり、1cm四方もない芽子(タケノコになる芽)を肥大させ地上部に発生させる。以後、偶数年に葉替わり、奇数年にタケノコが発生。
- 葉の量は、たとえば孟宗竹の親竹の場合、2~8万枚。
- 竹は1本の寿命10年~15年程度のうち、タケノコを発生させる働きがあるのは5~7年生ぐらいまで。
- 地下茎には5cm間隔で節があり、そこにタケノコとなる芽がついている。この芽は、伐竹などのショックを受けると、多くがタケノコとなって発生してくる。親竹を皆伐すると翌年は足の踏み場がないくらいにタケノコが発生してくるのに対し、竹伐しない竹やぶではタケノコの発生が極端に少ない。ほか、ウラ止め(タケノコから竹への伸長途上、幼枝が出かかった頃に先端部分を落とすこと)でも同じように発生が増える。
- 地下茎は、親竹1年目は未熟なためにタケノコが発生しないが、翌2年目から発生が始まり、4年目で最大となり、順次少なくなりながら10年目くらいから枯死していく。
- 地下茎は、先端部分がそのまま伸びるもの、切断や傷などの障害を受けて分岐するものなどがあり、総延長は10アール当たり2500~1万1000mともいわれる。1年間で伸びる長さはタケノコ生産林で約2m前後、隣接地に侵入するような場合には7~8mになることもある。
- 地下茎は平たん地では浅く、傾斜地になるほど深くなる。
- タケノコの高さと地際直径から親竹になったときの胸高直径(地面から2mぐらいのところの直径)を推定できる。タケノコ20cmのときの地際直径は胸高直径と同じ。タケノコ30cmのときの地際直径から-2cmが胸高直径。
- 親竹の高さは胸高直径から推定できる。高さは胸高直径の130倍。胸高直径が10cmであれば13mほどになる。
- 高品質のタケノコは、小石や砂利が少なく、深い土壌で北向きのほうが有利。土壌三相(空気、水分、土)のうち、空気割合が少ない土壌ほど高品質のタケノコが多くなる。一方、早だしタケノコは、南向きの平たん地がいい。
竹やぶ減らしの要は、養分を出し切らせて、養分を作らせないことです。養分を作り出す2年目までに伐竹をこまめに繰り返していけば枯渇へと向かっていく。養分を出させる1m切りは、冬まで待つ必要もなく、春の幼竹の時でも同じ効果がありそうだということも『農家が教える竹やぶ減らし』で紹介されていました。
竹を伐採の後、防獣柵を設置。竹の根茎がはりめぐらされているところに支柱を打ち込むのはひと苦労。
今後のやり方をまとめてみると
- 防獣柵の内側は、春の時期に幼竹を1m切りする。だいたいは胸高直径2,3cmほどのものなので高さも大きくても4mほどにしかならないが。
- 防獣柵の外側の2mぐらいも、内側と同じようにする。
- 防獣柵のさらに外側は、10m以上の竹もはえている地帯になるが、ゆくゆくその場所を使っていいような状態になったら、タケノコが採れるように整備していきたいところ。『特産シリーズ たけのこ』にも説明してあったように、全伐法にして親竹を育てるところから始めてみよう。メンマや穂先タケノコもいい。
次回竹のことを記事にするとすれば、全伐法を採用して親竹を管理してます、親竹の管理は計画的にやらないとグチャグチャですね、みたいなことになるかもしれません。
追記:跡地に果樹を植える
《2023年4月10日記》
竹やぶが消えていくのにも時間がかかります。そのまま放置しておくのももったいないので、野菜は難しそうなので木を植えました。
縦横無尽に竹の根茎が張り巡らされている。直径1mほどで根茎を除去する。スコップとかツルハシだとかなり手こずるが、竹の根きりの兵器で作業がずっと楽になる。根切り/大(浅香工業、6614円)。7㎏あるので振り回すには力がいるが。
イチジクを植え付けておく。踏んづけてしまう心配もあるのでピンクテープで目立たせておこう。
追記:幼竹が伸びてくる
《2023年5月1日記》
細い竹がいたるところから出てきた!