田舎暮らしでは、周りの人からのいただきものがたくさんあります。もっとも、いただきっぱなしというわけにはいきません。何かしらのお返しを考えなければなりません。買ってきたものばかりでは味気ないし、何より財布も寂しくなります。何か工夫を凝らしたいところです。そこでバナナブレッドの登場です。
大量の野菜をいただく
田舎では、自家用の野菜を育てている家が多くあります。農業をして作物を出荷しているわけではないが、自家用にするには十分すぎるほどの量を育てたりしています。
たとえば、お隣さんは、定年を過ぎていても、普段は働きに出ていますが、家の前の畑100坪ほどで野菜を育てています。早朝や、仕事から帰ってきた後、休日にせっせと畑仕事をしています。つらそうに畑仕事をしているのではなく、はやく畑に出たい、手入れしたい、が傍目にもすぐわかるほどハツラツです。コメはつくれないが、「うちは野菜は自給自足」だとうれしそうに話しかけてきます。
ただ、自給自足にしては多すぎる野菜、普段の奥さんとの二人暮らしでは食べきれない、その恵みがうちにもよく回ってきます。ありがたい!
お隣さんにとどまらず、いろいろなところから、獲れたて新鮮な季節季節の野菜をいただきます。スーパーで買い物ばかりしていると忘れがちですが、田舎暮らしのいいところは、季節感もまたを味わえることにもあるようです。
春にはタケノコ、冬にはユズと季節のものをいただく。ジャガイモや玉ねぎ、ピーマン、ナスなど一般的な野菜もたくさん届く。
お返しを考える
野菜をいただいて食費が浮いた、と喜んでばかりはいられません。獲れたて新鮮野菜の味を存分に堪能しながらも、お返しを考えなければなりません。ここは気にしなければならない大切なポイントですが、過敏になる必要もありません。
わが家では、旅先で地場の食べ物などお土産を買って来たります。あとは、知り合いから贈り物が届いたときに、それをお裾分けします。何かいただいたからすぐに対応するということではなく、気に留めておいて、良いものを仕入れたときにお返しする、というやり方です。
これは、本多静六翁の流儀を『私の生活流儀』で知ってから参考にしているだけです。
私は、物をもらってただちに物への返礼をいそがない。それはせっかくの厚意を突き返したような形になるばかりでなく、返礼の返礼を強い、相互に心配し合って、ついにイタチゴッコに陥る。
私は、ちょうど先方へ贈って喜ばれる物が有り合わせない限り、そうした物が自然に手に入るか、または何か、先方の参考になりそうな自著でもできる折まで、その返礼の機を待つことにしている。こうした不自然な作為や無理のない本当の好意の交換が、自他ともに幸福を増大するオツキアイだと信じておるのである。
願わくば、 本多静六翁が自らの著作を贈ることができたがごとく、自らコントロールできるものも作っておきたい。そうすれば、お返しもので思い煩うことから解放されるかも。喜ばれるもので、お金のあまりかからないものであれば盤石です。
さて、何が喜ばれるのか? 野菜を作っている人に、同じような野菜を作って持って行ってもあまり喜ばれないでしょう。状況によってそれぞれぞれではあるでしょうが、身近になく、不足している部分を狙ってみるのが良さそうです。
お金をかけないで、手間をかけてみる
ところで、いただく野菜類は、種や苗だけ買い込んできて畑に植えておけばできるというものではありません。土づくりから、水やり、肥料やり、害虫対策、防寒対策、雑草対策などなど、ものすごい手間もかかっています。その結果としての野菜です。お返しも同じように手間をかけてみるのはどうでしょうか。
ということで、本題のバナナブレッド作りです。田舎では、パン屋がない、もしくは、あったとしても遠くまで買いに行く必要があります。不足している部分でもあります。自分でパンを焼くということもあまりやられてなさそうです。
バナナブレッド作り 、実はこれ、『会社を辞めて田舎へGO』(樺島弘文・著、飛鳥新社)という本の中に出てきた話の受け売りです。バナナブレッドとチーズケーキを作ってお返しにしたら喜ばれたという話が載っています。特にお年寄りにはバナナブレッドが好評とあります。すばらしいので、さっそく使わせてもらいましょう!
著者は、元プレジデントの編集長でそれなりの収入もあったが、それを捨てて栃木の田舎へ移住。田舎暮らしを満喫する姿がすがすがしい。
バナナブレッドを作ってみる
バナナブレッド作りもネット上を見ればいろいろレシピが出ているので、困ることはありません。これまでパン作りをしたことのある人であれば、自分に合いそうなものを選んですぐに実行できます。
初めてであっても、面倒くさそうという心理的障壁を乗り越えられれば大通りへ出られます。わが家で初めて作ったときに、キッチンになくて、新たに買って用意したものは、食パン型の焼型ぐらいです。オーブンは、電子レンジについているオーブンを使いました。頻繁に作るようになってから、便利な道具類を揃えていっても遅くないでしょう。それまでは、あるもので間に合わせれば十分です。
わが家での作り方は、以下のようなものです。混ぜるだけの生地なので、発酵させるような手間がかからない上に、失敗も少ないです。
材料(パウンド型1個分)
- バナナ 2本
- 薄力粉 150g
- ベーキングパウダー 小さじ2
- 卵 1個
- バター 50g
- 塩 少々 (有塩バターの場合はなし)
- 砂糖 80g
- 牛乳 大さじ3
- レモン汁 少々
- くるみ 50g
作り方
大きめに切ったオーブン用シートに型をのせ、型にそってシートに折り目をつける。折り目でシートが重なる部分に切り込みを入れ、型に敷きこむ。
バターを耐熱容器に入れ、ラップをかけずに電子レンジで30~40秒ほど加熱して溶かしておく。
オーブンは180℃に予熱する。
バナナ 1.5本は袋に入れてつぶし、残りは1cmの輪切りにし、レモン汁をまぶしておく。
ボウルにバター(今回は有塩)を入れ、しゃもじ(ゴムべらの代用)でかき混ぜる。砂糖(今回は、きび砂糖)を加えて混ぜる。バター全体がなじんできたら、卵を加えて混ぜる。つぶしたバナナ、牛乳を加えてさらに混ぜる。
薄力粉とベーキングパウダーをボウルに加える。粉っぽさがなくなるまで混ぜ、粗くきざんだクルミも加えてさっくりと混ぜて生地を作る。輪切りにしたバナナを入れた生地を型に流し込み、180度のオーブンで40分ほど焼く。
焼きあがったら、金網の上に置いて粗熱をとる。
パン作りの素人であっても、作る回数を重ねるごとに要領をつかみ、うまくなってきて、お返しものとして通用するようなレベルに到達できるはずです。
お返しの応用例
今回は、『会社を辞めて田舎へGO』に示唆を得て、そして、敬意を表して、バナナブレッドにしてみました。お金をかけずに手間をかけてみるという考え方は応用がききます。バナナブレッドは一例ですので、周りの状況を見回してみて、喜ばれそうなものを考えだしてみてください。
ちなみに、素材に近いところから、料理するというのに慣れることは、節約と、健康食という新たな道も開いてくれます。小麦粉をこねることに慣れてくれば、うどんなども自分で作ってみようと発展していく可能性も十分にあります。