生芋こんにゃくをつくる。

公開日:2020年12月19日 更新日:

こんにゃく芋をいただきました。少し前までは、こんなものからこんにゃくができるという想像すらつきせんでした。

生芋こんにゃくをつくる:医食農同源で旬を味わう
生芋からこんにゃくをつくる。

生芋の場合、加水量3倍、炭酸ナトリウム0.5%

昔は、こんにゃく芋を生のまま、あるいはゆでて皮をむいてすりおろしたものを使うのが主流でしたが、今ではこんにゃく芋を薄く切って乾燥させ(荒粉・あらこ)、さらに細かい粉(精粉・せいこ)にしてから作る方法が主流になっています。

精粉の方法が発見されるまでは、こんにゃく芋が収穫できる秋限定の食べ物だったわけです。

こんにゃく特有のプリプリとした歯ざわりは、こんにゃくに含まれるこんにゃくマンナンという食物繊維が灰汁(あく)というアルカリ性物質によって変化したためだそうです。

こんにゃく芋は、少しかじっただけでも口の中がピリピリするほどの強烈なエグミがあり(試したことはありまんが)、獣でも、イノシシは一度食べれば、その後嫌って寄ってこなくなるほどといいます。他の芋のようにそのままゆでたり、焼くだけでは食べられません。

エグミの正体はシュウ酸やフェノール誘導体などで、これらを中和して取り除くために必要なのが、こんにゃくを固める働きもする灰汁(あく)です。昔は草木灰が使われていましたが、最近では消石灰(水酸化カルシウム)や炭酸ソーダ(炭酸ナトリウム)が使用されています。

神奈川県の農業技術センターの品質機能研究課は、下記のように生芋こんにゃくの作り方のアドバイスをしています。

水酸化カルシウムを凝固剤として使うと空気中の炭酸ガスと反応し、アルカリ度が低下してコンニャクがいたみますが、炭酸ナトリウムを凝固剤として使っているので、炭酸ガスの影響はありません。しかし、水酸化カルシウムに比べてアルカリ度が低いので、長期に保存すると品質低下が起こります。コンニャクの外側から崩れるようになっていきます。これは液のにごり方でも分かります。作ったときの加工所の環境条件、衛生条件でも保存期間は異なるのですが、炭酸ナトリウムで凝固したコンニャクは1~2週間以内に使ってしまいましょう。

兵庫県立北部農業技術センターは「 生芋コンニャクを木灰のあく汁で固める製法は経験によるところが多く、製品の品質が一定しない要因となっている」として、「生芋および荒粉を原料としたコンニャク製造における加水量、凝固剤の種類、添加量を検討」しています。

産地や栽培条件による原料品質の違いで若干の調整は必要であるが、コンニャク製造の目安は、生芋コンニャク製造では加水量3倍、炭酸ナトリウム0.5%添加(いずれも対生芋重比)、荒粉コンニャク製造では加水量16倍、炭酸ナトリウム12%添加(いずれも対荒粉重比)である。食感のよい均質な製品とするため、ミキサー等による磨砕を丁寧に行う。

これらを参考にして作ってみます。500gの生芋で板こんにゃく5,6枚できるとどこかに書いてありました。1㎏弱の生芋を二つもらいましたが、全部してしまうと大量です。500gだけ生芋こんにゃくにして、他は荒粉にします。

生芋こんにゃくの作り方

こんにゃくは刺激が強く、素手で触れるとかぶれます。ゴム手袋をつけて作業します。

こんにゃく芋の下準備

下準備でこんにゃく芋をよく洗う:生芋こんにゃくのつくり方

まずは、土を良く洗い落とす。亀の子たわしを使ってゴシゴシと洗うのが一番。

出来上がったコンニャクに褐色の粒々を入れたくなければ皮を除いた方が良いでしょう。でも、包丁で皮を剥くと廃棄部分が多くなり、歩留まりが少なくなります。金だわしで皮を擦りとると廃棄部分は少なくなります。市販されている黒コンニャクのように、小さな褐色の粒々が入るのが気にならなければ皮を剥く必要はありません。

神奈川県の農業技術センターの品質機能研究課
芽の部分を取り除く:生芋こんにゃくのつくり方

コンニャクの芽はエグ味が強い。この芽の部分はちょっと大きめに取り除く。

この取り除いた部分を種に使うこともできます。切り取った部分をちょっと乾燥させてから、畑に植えると春には芽が出てきます。

神奈川県の農業技術センターの品質機能研究課
こんにゃく芋をゆでる前に角切りでカット:生芋こんにゃくのつくり方

4cm角ぐらいにカット。

こんにゃく芋をゆでてミキサーにかける

こんにゃく芋をゆでる:生芋こんにゃくのつくり方

竹串などが‘スッ’ととおるまで茹でる。

こんにゃく芋をミキサーににかける:生芋こんにゃくのつくり方

ゆでたイモと水(ぬるま湯)を入れてミキサーにかける。

今回は、2回に分けてミキサーにかけました。3倍量くらいの水(ぬるま湯)を加えるので、イモが多いと水が入らなくなり、粉砕処理がスムーズにいきません。500gの生芋なので、加水量は1.5l。700mlを2回、残りの100mlでミキサーについたイモを洗い流すようにしました。

水の温度は高からず、低からずの15~25℃くらいの温度でよく、普通の水道水を用いればよいでしょう。温度が高ければ、マンナン粒の吸水は良いのですが、温度が高いコンニャクノリに凝固剤を入れると、コンニャクの凝固が早く始まるため、のんびりと作業ができなくなります。
粉砕処理に使う水は最後にジョッキの中の洗いに使う量を少し残してください。ジョッキに残ったコンニャクイモもきれいにボウルに洗い込んでください。

神奈川県の農業技術センターの品質機能研究課

こんにゃく芋を練り込む

こんにゃく芋を練り込む作業が大事:生芋こんにゃくのつくり方

ミキサーしたものは、かき混ぜ用の鍋に移して練り込む。

十分に吸水したコンニャクマンナンに凝固剤を十分に利かすため、コンニャクノリを練り上げなければなりません。プックリと膨らんだマンナン粒が潰れて、ベトベトした糊状になるまで練り上げてください。練り上げが不足したままに凝固剤を入れると弾力の少ないコンニャクになります。ヘラを使ってかき回すことはできますが、コンニャクを練ることは大変に難しいことです。手を使ったほうが短時間に練り上げることができます。

神奈川県の農業技術センターの品質機能研究課
ヘラを使って平面にする:生芋こんにゃくのつくり方

すぐにちょっとした固まりになってくるので、へらで全体をかき混ぜ、均一になるようにする。温度が下がるよう1時間ほど放置。

炭酸ナトリウム2.5gと溶き水用の水100mlをあわせて凝固剤をつっておきます。炭酸ナトリウムは冷水では溶けにくいので温湯です。

凝固剤を入れる前に良く練り込む:生芋こんにゃくのつくり方

凝固剤を入れる前によく混ぜる。凝固剤を入れたらすばやくまんべんなく練り上げる。

温湯に溶かした凝固剤はサーッと加えてください。凝固剤を加えたらコンニャクノリの全てに行渡り、完全に混ざり合うまで練り上げてください。練り上げが不足したままにするとコンニャクの弾力にむらが出るだけでなく、コンニャクの保存性が悪くなります。

神奈川県の農業技術センターの品質機能研究課

成型

凝固剤を混ぜたものはいろいろな形に成型できます。手で丸い形に成型すれば手作り感のあるものにできます。

型に流し込んで成型:生芋こんにゃくのつくり方

型に流し込んだら、表面をなめらかにし、1時間ほど放置しておく。

加熱凝固

鍋で加熱して凝固、そして保存する:生芋こんにゃくのつくり方

好みの大きさに切り分けて加熱。鍋2つで加熱したが、鍋が小さくくっつくものもあった。もっと大きな鍋で加熱するのがベター。

成型したコンニャクノリは熱湯に入れて加熱します。加熱時間は成型したコンニャクの大きさによって異なります。これはコンニャクの中心まで、凝固に必要な温度まで達する時間が成型した形や大きさによって異なるからです。中心部までしっかりと凝固していることを確認してください。ちょっと大きいコンニャクの固まりを真二つに切ってみるのが一番確実です。
コンニャクの凝固では加熱しすぎるということはほとんどありません。十分に加熱してください。

神奈川県の農業技術センターの品質機能研究課

保存

ゆがいた水の中(ゆで汁)につけておくと保存ができます。食べる前に、ゆがいてアク抜きして食べるようにします。

加水量と凝固剤量の調整

何はともあれ、刺身こんにゃくにして食べました。フニャフニャした感じで刺身こんにゃくとすれば味わいがありました。われながらうまくできたかなと思いました。でも少し弾力がなかったのは、凝固剤を入れる前の練り込みが不足していたからかもしれません。

実は、成型のときに一部を手作り感のある丸い形にしようと試みましたが、もろくも崩れてしまったので、それは次回に持ち越しです。

もしくは、加水量と凝固剤量が関係しているのかもしれません。

①加水量が少ないと製品のpHは高く、色調は濃く、硬くなる。加水量3倍(対生芋重量比)の色、硬さ、弾力性、味の官能評価は高い。

②凝固剤は炭酸ナトリウムが適し、製品のpHは高く、色調は濃く、硬い。色、硬さ、弾力性の官能評価が高い。炭酸ナトリウムの配合が少ないかんすいほど製品の色調は淡く、軟らかく、官能評価が低い。消石灰(水酸化カルシウム)は0.5%添加では凝固しない。

③凝固剤(炭酸ナトリウム)の添加量を多くすると製品のpHが上がり、色調が暗く赤くなり、硬くなる。添加量0.5%(対生芋重量比)の評価が高く、2.5%の製品は、色調の暗色化により色の評価が低下する。

兵庫県立北部農業技術センター

産地や栽培条件による原料品の違いなども踏まえれば、いろいろ考慮することもあるでしょう。場数を踏んで勘を養っていきます。

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執筆者:有賀知道

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