今年春に植えた100本の桑の苗、そのうち50株で発育の良い枝一本を残して他の枝は剪除する作業をしました。1株から2~4本ほどの枝を剪除したので、150本ほどにはなりました。それで桑茶づくりです。
春に植えた桑を剪定する
黒沢明監督の『用心棒』の冒頭シーンは、風来坊の浪人(三船敏郎)が冬の桑畑をさまようところからはじまっています。名前を聞かれ「俺か、俺の名前は・・・桑畑三十郎、もうすぐ四十郎だが」と周りをみわたしての思い付きの答え。落葉して、地面から30cmくらいの株から枝が数多くまっすぐに伸びているだけの冬の桑畑の風景です。
映画がつくられた1960年ごろはありふれた桑畑の風景だったでしょうが、でもこれ、時代設定の江戸末期にはなかった風景です。一般財団法人大日本蚕糸会が発行するシルクレポートの2015年3月号で横山岳さんと言う方が「『用心棒』の桑畑は昭和期の条桑育用のもの」指摘しています。
条桑育(じょうそういく)とは、葉のついた条(枝)ごと剪定して収穫し蚕に桑の葉を与えることです。それ以前の、葉をコツコツ摘んでいるより効率がはかどります(繭質は若干悪くなる)。
どういう状態の桑からコツコツ摘むのかと言うと、桑の大木からです(「立通し」と言われる)。踏み台や梯子を使っての収穫です。条(枝)が剪定されないとこうなってしまいます。剪定することで、樹形が低く抑えられ、葉の収穫と管理が容易になるということです。
昭和期になって条桑育が普及し立通しの桑畑は日本からほとんど姿を消すことになります。なので、江戸末期の桑畑は立通しということになります。
剪定方法(仕立法)も、桑種や収量を踏まえて「根刈り」「中刈り」「高刈り」方式が確立され、その仕立法を踏まえて「春切り」「夏切り」などの収穫方法が取り入れられるようになります。
さてさて、今年春に植えた100本の桑の苗、当初は何もしないで来年春に「根刈り拳式仕立法」と呼ばれる方式で剪定しようと思っていましたが、大先輩のアドバイスを受けて今年7月に「中刈り無拳式仕立法(山形式仕立法)」も採り入れて、発育の良い枝一本を残して他の枝は剪除することにしました。
100本全部を一つの剪定法ではなく、50本ずつをわけてみることにします。
7月20日。発育の良い枝一本を残して他の枝は剪除する作業です。約50株で、1株から2~4本ほどの枝を剪除したので、150本ほどにはなりました。長いので50cmぐらいの枝もあります。
1株から枝が3,4本ほど出ている。
発育の良い枝一本を残して他の枝は剪除する。
バケツの底に水を少し入れて乾燥しないようにする。今回、バケツ2杯分の収穫があった。
剪除したものを、2回に分けて桑茶にしました。
桑茶の作り方
健康茶づくりの基本は、「採種」→「洗浄」→「乾燥」です。桑の葉は硬いので「蒸す」という作業が加わります。
- 採種してきた桑はすぐに茶づくりするにこしたことはないが、時間が空くようなら葉が乾燥しないように水に浸しておく。
- 洗浄は、屋外の水道(があれば)を使って洗った後、屋内でより丁寧にすればスムース。
- 小さい蒸し器しかなければ、何回にもわけてやる必要がある。今回の量で30回以上はやった。1分蒸して、箸で上下を入れ替えて、さらに1分蒸してみる。
- 量が多くなれば乾かすところが問題になる。蒸した葉は、なるべく広げておきたい。今回はブルーシートに新聞紙を敷いて、そこが満杯になった。日をおいて2回つくったが、それぞれの日で満杯。夏の暑い日なら、日にはあたってないが半日ほどでかなり乾く。
- 天日に干す場所の確保も問題。ブルーシートの上において半乾燥するとかなり小さくなる。それを2つの干し網ネットでプチベランダに吊り下げて天日干しも半日ほどする。完全に乾く。1日目がブルーシート、2日目が天日干し。これを2回に分けてやる。
葉身部分で切る。乾燥しやすい状況なら、葉柄部分も入れても問題ないが、今回は葉身の部分のみ使った。
屋外の水道で洗浄してあったので、軽くすすぐ程度。
野菜水切り器があることを思い出し、ざっと水気をとっておく。
1分蒸して、箸で上下を入れ替えて、さらに1分蒸してみる。全体が均一で蒸しあがるように。
蒸しあがった葉を、一枚一枚広げて並べる。面倒くさいがこれをしたほうがムラなく全体的に乾く。このあと干し網で天日干しにした。
日をおいて2回に分けて作りました。1回目は慣れなかったので、妻に少し手伝ってもらいましたがブルーシートに並べるまでに半日はかかりました。しかし2回目の作業は早い。妻に全部手伝ってもらいましたが1時間で終わりです。妻が葉を切る→私が洗浄・蒸す→妻が葉を広げる、みたいな感じです。
2回目のときは剪定した葉を畑に半日ほど放置してしまい、日にあたっていたところが枯れはじめて使えなくなったという失敗もありました。
1回目の出来上がりは220gです。手提げのポリゴミ袋(中)に、少しくだいて全部おさまりました。ミルサーで粉末にすればさらに体積は減るでしょうが、くだかずに葉の原型をとどめるようにしたほうがありがたみが増すかも。2回目も入れて全部で450gほど茶になりました。
1キロのお茶を作るにしても、蒸し器と干す場所があれば、作業自体は1日で全部終わりそうです。あとは肝心の葉があればの話です。
今回、50株ではなく100株全部剪定したとして、でき上がりは1キロほどです。もっと育ってから葉っぱがでかいのであれば、それほどでもないかもしれないが、案外枝数は必要な感じです。1キロといっても、一日5g毎日消費するとすれば200日です。
ともあれ、でき上がりの桑茶5グラムほどを急須に入れて飲む。予想以上にうまい。