『続 無肥料栽培を実現する本』

公開日:2021年2月14日 更新日:

無肥料栽培とは、お金を払わなくても持続的に用意できるものだけで栽培すること著者は定義します。それぞれの状況によって用意できるものは違ってきます。

『続 無肥料栽培を実現する本』(岡本よりたか・著、マガジンランド、2019年)
『続 無肥料栽培を実現する本』(岡本よりたか・著、マガジンランド、2019年)

昨年の無肥料栽培の結果を踏まえて

もう少しすれば畑作業の時期になってきます。その前に、少しでも作物栽培の理解を深めておきたいところです。 昨年やったことを整理したり、今後もやり続けることをにらみながらです。

昨年は、10年以上耕作放棄された畑を家庭菜園にして、無肥料で作物はできることはわかりました。インゲン、ダイズ、ジャガイモ、ほんの少しのサツマイモを収穫できました。 インゲンとダイズは採種も行いました。

作付け前の畑の状況もみて、この畑でも収穫できそうなマメ類やイモ類を作付けしたということはあります。

もっとも無肥料で作物ができるかどうかというよりも、その前段階の害獣対策に夏までは注意をもっていかれてました。田舎では害獣対策ができてはじめて作物づくりに入っていけるということが、よ~くわかりました。

花が咲くところを見られなかったジャガイモ、ツルはいい感じに伸びていると思ったがまともな収穫にはいたらなかったサツマイモ、今年も植えます。ダイズは虫にやられたので、その対策も考えます。

今年は無肥料でうまく育つかはわかりません。下手をすれば、休耕して貯まっていた土中のミネラルを使い切ってしまった、なんてことはないでしょうが、今後も作物が育ち続けるような畑にしていこうと思っています。

昨年は草を育てるようなことはしてなかったし、草も持ち出したりしていたのがひっかかります。なぜ、草を育てるのが良いのか、草を持ち出してはいけないのか、本書を読んでよくわかりました。

無肥料栽培を自然界の基本原理からみる

『続 無肥料栽培を実現する本』があるということは、その前があるということですが、私は『続』を最初に読みました。自然界の原理原則のことがより詳しく書いてあったからです。草対策や病害虫対策など細かい作業に役立ちそうなことや基本的なことは、『1』のほうが詳しいので、必要に応じて参照するつもりです。

『続』の自然界の原理原則の説明の中でも、ミネラルの循環は、深く記憶にとどめおこうと思ったところです。

ミネラルの循環の話の前に、植物におけるミネラルの位置づけですが、ヒトと同じような機能をしているのではぐらいのイメージで私はとらえています。前回紹介した『天然の食卓をつくる本』で『豊かさの栄養学3 ミネラル最新』も取り上げました。

人間のからだは主要元素、O(酸素)、C(炭素)、H(水素)、N(窒素)で97%。炭水化物、脂肪、タンパク質、ビタミンもほとんどこの4種類の元素でつくられている。ミネラルと言われるのは残り3%の世界の話。

植物の場合は、主要元素の割合はさらに高くなります。ミネラルは1%以下の世界です。主要元素は大気と水の中に含まれています。ミネラルは土の中から摂取します。植物が必要とするミネラルは現在、17元素と言われています。

植物は大気中にあるような元素を使って、炭水化物、脂肪、タンパク質、ビタミンをつくることができますが、それらがスムーズに行われるようにするのがミネラル、縁の下の力持ちぐらいの理解です。

さて、ミネラルの循環です。

植物の枯れた残渣を土に戻すことで、土から吸い上げられミネラルも戻ることになります。なので、草を畑の外に持ち出してはいけないということにつながります。

ただ、著者はこれを小さな範囲の循環の話とします。大きな範囲とは地球全体規模でのミネラルの循環です。

放っておいても畑のミネラルは流出します。たとえば、水溶性のミネラル(ナトリウムやカリウム、カルシウム、鉄、銅、亜鉛、リン、マンガン、要素など)は雨や地下水、伏流水などで流れて行ってしまいます。もちろん逆に、流れ込んでくるものもあります。畑の範囲を超えたミネラルの循環があるということです。

そのときに、どのようにすればミネラルの流出を防げるのか、のみならず、ミネラル量を増やすことができるのかというと、植物を生やしておくことだという見方が面白い。

草は、放っておくと流されてしまうミネラルをそこに留めておくもの、という見方です。作物ができるということは、ミネラルを吸い上げるということです。普通の味方ですと、吸い上げられればミネラルが少なくなるのでミネラルを肥料として与えなきゃ、となるところです。

流れ込んでくるミネラルもあるので、草を持ち出さないで、どんどん草を生やせば、全体としてそこの場のミネラル量は増えるということになります。実際には、食料とする葉や実、根を持ち出すのでその量に応じて手立てしたほうがいいことになりましょう。もしくは、それを食べた自分のフンや遺骨までまくということにすれば循環の意味合いはかなり出てきます、無理ですな。

本書を読んで、雑草がいろんな種類生えていることはミネラルが豊富な証だということを改めて確認しました。長い間、耕作放棄され草がボウボウの畑に手を入れるほうが無肥料栽培をやるのによさそうな感じがします。

ミネラル、微生物のためにも草が必要

放っておけば流れゆくミネラルをキャッチするために草を生やしておいたほうがいいということともに、もう一つ、草があれば微生物が活躍する場が保たれるということもあります。

植物は光合成で、CO₂(二酸化炭素)とH₂O(水)があればブドウ糖をつくることができると確かに学校で習いました。C、H、Oがあれば、ブドウ糖 → デンプン → 炭水化物、ブドウ糖 → 脂肪、と変幻自在ですが、N(窒素)がないとタンパク質やビタミン、成長ホルモンはできません。

なので、慣行栽培では肥料の三要素の一つとして窒素肥料をバシバシ投与するわけです。しかし、窒素は大気中の8割近くを占めています。これがうまく利用できればその必要ありません。

というよりも自然界を見渡せば、誰も窒素肥料をやってなくても植物は窒素を取り込んでタンパク質やビタミンなどを作っています。植物は大気中の窒素をそのままでは利用できないのにもかかわらずです。

そうです、微生物の力を借りて窒素を取り込んでいます。大気中の窒素 → 根粒菌などの窒素固定菌により → アンモニア態窒素 → 硝化菌により → 硝酸態窒素 → 根から吸収 となります。

こうしたことをふまえ、菌など微生物や昆虫、雑草など生物の力を使って栽培するのが自然栽培や自然農法などと言われるものでしょう。逆に、窒素肥料などを与えて微生物の活躍の場を奪ったり、除草剤や農薬を使って殺したりというのが慣行栽培ということになります。

草があればあるほど、窒素を取り込んでくれる菌のほか、ミネラルを運んでくれる菌、枯れ葉や根、死んだ生物を分解する菌など微生物がどんどん活発になってくれる姿がイメージできます。虫や小動物など生物相も豊かになってくるでしょう。豊かに活発になれば生物の力も借りやすくなります。

そうでした、著者の言う無肥料栽培とは、お金を払わなくても持続的に用意できるものだけで栽培することです。もちろん何もしないということではありません。雑草堆肥(時間短縮とカビ防止の効果、周りの人からの危険視抑止)を提唱するなどミネラルの循環を踏まえて手立てをします。鶏をかっていれば、鶏糞も肥料にすることは問題ありません。

自然界の原理原則からみた無肥料栽培のことはわかりました。本書には、PH(ペーハー)の話も出てくるのですが、あらたに理解したいこともでてきました。そもそも酸とかアルカリとは何? 水素イオンの量によって酸とアルカリは決まるみたいだが、これと、カルシウムとか草木灰がアルカリ、どういうこと?

これについては、また理解を深める機会があるでしょうから、そのときまで取っておきます。でも誰か良い本があったら教えてください!!

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執筆者:有賀知道

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