『奥薗壽子の読むレシピ』

公開日:2019年11月19日 更新日:

『奥薗壽子の読むレシピ』(奥薗壽子・著、産経新聞社、2008年)。

『奥薗壽子の読むレシピ』(奥薗壽子・著、産経新聞社、2008年)。ナマクラ流ズボラ派の家元が産経新聞に連載したエッセイをまとめたものです。

料理を作ってみたくなる

2年ほど前、私が最初にじっくり読んだ料理本です。ただ単に、レシピが紹介してあるよりも、どういう状況の中で、その料理を作ろうと思ったのか、食べたときの家族の反応、そうしたことも書いてあるので、すんなり読み進めたのだと思います。

池波正太郎さんの食べ物エッセイを読むと、無性にうまい食べ物屋さんに行きたくなるがごとく、この本を読むと作ってみたくなる、そして、簡単に作れそうな気にもさせてくれる本です。

たとえば、ゴーヤの甘味噌炒めの話。著者はゴーヤを世の中にこんなまずいものがあるものか、と思っていたといいますが、友達が手を差し伸べてくれます。

そんな私を見て、それならば、と教えてもらったのがゴーヤの甘味噌炒め。文字で書けばなんて言うことはない料理なのだけれど、甘い味噌味がゴーヤの苦みとうまくからまり、なんとも言えずおいしい。生まれて初めて苦みをうまいと感じた瞬間だった。今日は久しぶりに作ってみよう。

と言って、作り方を教えてくれます。こんな調子で、季節ごと、ワンシーズン16のレシピ、計64のレシピを紹介してくれます。

先日も、牡蠣のポン酢醤油煮、どうやったっけと、パラパラとページをめくっていました。最初に読んでインパクトがあったこともあるでしょうが、何回も読み返している本です。

料理はあらすじが大事

もっとも、ズボラ流なので、忠実にレシピを押し付けるようなスタンスではありません。

レシピを使う人も、もっといい加減にレシピを読んでいいのではないでしょうか。メインの材料と、作るプロセス(食材をまず炒めてから煮るのか、煮汁を煮立てた中に入れるのか、あるいは水から煮はじめるのかとか)、それから使う調味料(味つけけはしょう油とほんの少しのみりんだなとか、しょう油とみりんが同量だなとか、みそにしょうが汁が入るんだなとか)、その程度の読みで十分。

私はそれを「料理のストーリー」と呼んでいます。ストーリーさえ頭に入っていれば、細部は自分の舌を信じて、好きなように遊んでみていいと思っています。そうやって遊んでいくうちにわが家の定番ができあがっていけばいいなと思うのです。

これは、『ズボラ人間の料理術』に書いてあるのですが、『読むレシピ』ももちろん同じスタンスが貫かれています。大体の作り方(料理のあらすじ)を頭に入れて、どんどん使い込んで、オリジナルな一冊にしましょうと誘ってくれます。

『ズボラ人間の料理術』は、著者の考えがよくわかる、家庭料理入門書でもあります。この本もお勧めです。

田舎暮らしとの関連で一つだけ。 『ズボラ人間の料理術』 に<「一日30品目」より「ばっかり食べ」で健康に>という項目があります。30品目をいかにバランスよく食べるかの知恵より、今、家にある野菜をいかにきれいに食べきるかの知恵、季節季節ごとの大量の旬の野菜をどうやって食べるかの知恵のほうが大事と指摘しています。私が付箋をペタペタと貼ったところです。レシピとすれば、和風ラタトゥユを提案しています。複数のあらすじ付きでです。

時短料理も概念が変わってきた

前回紹介した、『小林カツ代と栗原はるみ』の中で、著者も数行で簡単に紹介さされています。2002年に「TVチャンピオン」(テレビ東京系)の「3分料理人選手権」で優勝した、と。位置づけは、小林カツ代の時短料理路線の料理研究家としてです。

これまでの時短料理は、材料を替えたり、段取りを工夫する程度だったり、早いけど味はいまいち、という評価を下されがちでした。それが、小林カツ代以降、簡単で早いけどおいしい、となってきた、と。

田舎暮らしと時短料理は相いれないものではなくて、うまく取り入れていくべきものだと思います。何より、田舎暮らしは思いのほか忙しいです。仕事をしている人はもちろんのこと、仕事をしていない場合でも、丁寧な暮らしをするため、野菜作りやらDIYなどしてスローライフを満喫しようと思えば思うほど忙しくなります。すべて買ってすませたほうが、どれほど時間が生み出せ、ゆっくりできることか!

それはさておき、著者の場合、時短料理と言っても、「手を抜くことで、おいしくなること」「限りなくヘルシーであること」も掲げています。その結果、素材をなるべく活かす方向であったり、乾物を使うようになります。また、ダシの素は使わず、手間のかからないようにダシもとりますし、甘み付けに砂糖を使わず、蜂蜜かみりんで味をつけています。田舎料理とも相性が良いはずです。

わが家でもまねて、蜂蜜を多く使うようになりました。でも、容器に入っている蜂蜜を最後の一滴まで無駄なく使うのは難しい。

残っている蜂蜜の容器を横から見て、蜂蜜の高さと同じくらいの高さまで醤油を入れ、ふたをしてしゃしゃか振っておきます。これ、実は照り焼きのたれなんですね。鶏肉や魚の切り身をフライパンで香ばしく焼いたところに、これを入れてからめたら、即、照り焼きの出来上がり。

本書には、こうした、ちょっとしたコツや工夫などもちりばめられているのも参考になります。

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執筆者:有賀知道

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