『家庭菜園でできる自然農法』

公開日:2020年5月30日 更新日:

『家庭菜園でできる自然農法』(野菜だより編集部・編、 学研プラス、2019年)
『家庭菜園でできる自然農法』(野菜だより編集部・編、 学研プラス、2019年)

自然農法のプロたちがわかりやすく伝授

これまで『自給自足の自然菜園12カ月』と『自然農の野菜づくり』を紹介しました。これらは、竹内孝功さん、高橋浩昭さんのやり方に沿って書かれたものです。

最初に、ざっくりと自然農法(自然農、自然栽培など)について理解してから、この2冊に進んだほうがよりスムーズに読み進めるかもしれません。とともに、いろいろなやり方がありそうで、一つのやり方に固執しなくても良さそうだ、と思えて気が楽になります。

本書は、ムック型(雑誌と書籍の中間の形態)の本でざっくりと理解するにはちょうど良い感じです。自然農法の実践者らが登場し、自然農法の考え方から具体的な栽培方法まで簡潔に解説します。畑のプロが初心者でもわかるようにかみくだいて教えるような形に編集されています。

『自給自足の自然菜園12カ月』の竹内さん、『自然農の野菜づくり』監修者の川口由一さんをはじめ、MOA自然農法文化事業団の三浦伸章さん、「たねのがっこう」主宰者の岡本よりたかさん、「えと菜園」の小島希世子さん、関野農園の関野幸生さん、たむそん自然学校の田村吾郎さんなどが登場します。

本書は、隔月刊の家庭菜園誌『野菜だより』などがベースになっています。『野菜だより』は2007年季刊誌としてはじまり、2010年に定期雑誌化されています。雑誌がぜんぜん売れないと言われる中、時代の波にうまくのります。定期化のときの触れ込みは下記のようなもでした。

ここ数年、家庭菜園を楽しむ人は年々、増え続けています。その背景として、食の安全・安心への高い関心があります。家庭菜園をはじめようという人の多くは安心な有機・無農薬栽培を望んでいますが、これまでは、有機・無農薬は難しく、敷居が高いという印象がありました。『野菜だより』では、有機・無農薬で野菜づくりをしているベテラン家庭菜園家に取材し、誰にでも簡単にできるやりかたをわかりやすく解説することによって、有機・無農薬栽培を楽しくて、より身近なものにしています。

有機・無農薬栽培を誰もができるように、畑の達人たちが伝授するという姿勢は今も変わっていません(2020年5月号から刊行元は、学研からブティック社に変わりましたが、編集プロダクションは同じ)。「趣味の菜園シリーズ」(ムック)も同じ姿勢です。

本書『家庭菜園でできる自然農法』も趣味の菜園シリーズの一つです。『野菜だより』のほか、このシリーズの『はじめての自然農で野菜づくり』『自然農法でおいしい野菜づくり』などに掲載された記事を元に加筆・再編集されています。

草を生やさない自然栽培もある

先ほど、「一つのやり方に固執しなくても良さそうだ、と思えて気が楽になります」と書きました。その例が、 関野農園の関野さんの「無肥料で野菜が育つ仕組み」についての話です。関野さんの農園は、ビニールマルチや防草シート、それでも生える草は根から取り除くそうです。慣行栽培のようにして野菜を育てる。しかし、無肥料・無農薬です。

あれ、草がなくてもいいの? 草が畑の肥沃化、地力の維持、回復に大きな役割を果たすのじゃなかったっけ。

草を使わなければ肥料ということで、肥料の3大要素は窒素、リン、カリウムです。「無肥料で野菜が育つ仕組み」によれば、自然界のレベルまで土中の窒素濃度が下がると、植物は自分の根から微細な有機物を出す、すると、根の周りに土壌微生物が集まって共生関係が結ばれ、窒素を供給してくれる。リンについては、根に共生している菌根菌が供給してくれる。地中には植物が直接利用できないが十分なリン酸分があって、菌根菌がそれを分解してくれる。ただ、菌根菌は窒素濃度に敏感なため、施肥されているような畑では存在できない。カリウムについては、ほとんど与えなくても植物は育つとしています。

こうした理解のもと、自分の農園では無肥料だが作物が育っていると説明しています。とともに、一番大事なのは、種の採取だと指摘しています。固定種を取り続けることが重要で、何世代も種を繋ぐことで、その土地に適した生命力のある本来の野菜が育つ。肥料がなければないで、そこに適応できる種ができて作物が育つという理屈です。

また肥料を使わないことで病害虫が発生せず、自家採取した種で、連作豊作が可能とも。

もっとも、関野さんはプロ農家としての作業効率を考えて、草を生やさないようにしているので、草を生やさない方法が一番良いと言っているわけではありません。

種と畑があれば食べ物はつくれる

種については、「たねのがっこう」主宰者の岡本さんも、販売されている種は多くの肥料を使って育てることが前提のため、自然農法の畑には合わないと自家採取を勧めます。

植物たちの記憶力や適応力はすごいんです。その畑にふさわしい栄養の使い方や根の生え方も、わかってくる。タネ採りを続ければ、それまで想像もできなかったくらい、収穫量が上がってきますし、栽培もしやすくなってきます。ですから、ぜひタネ採りをしてほしいですね。どんなタネでもいいですが、できれば交配種よりは、固定種で始めてみてください。

自家採取での栽培の重要性を踏まえつつ、「自然農法ならば種と畑があれば食べ物はつくれる」という岡本さんの話は、自然農法の良さを端的に言い表している気がします。

ちなみに、「固定種」とは形質が固定され、自家採種した種を蒔くと、親と同じ子が生まれる「品種」のことです。家庭菜園にこそ固定種がいいと訴える「野口のタネ」(野口種苗研究所)の野口さんが埼玉県の農業高校の先生を相手にした「固定種について」の講演の中で次のように述べています(抜粋)。

固定種というのは、「固定された形質が親から子へ受け継がれる種」のことで、種苗業界の用語です。種苗業界では、複数の親から異なる形質を受け継いで、第一代目の子だけがその中で優性の均一形質を現す「交配種=F1」に対して使われ、親が単一であるために、単に「単種」と言われることもあります。

F1誕生以前の植物種子は、すべて固定種として育成されてきました。そのため、すべての在来種の種子は固定種であると言ってもいいわけですが、たとえ伝統野菜とか地方野菜と言われる分野の野菜でも、形質が一定していない(固定されていない)野菜は、単なる「雑種」で、固定種と呼ばれることはなく、プロの種屋の販売対象ではありませんでした。種屋にとって、F1が生まれる以前は、本物の固定種だけが販売価値がある種子だったのです。

今日、いちばん皆さんに言いたいことは、「固定種の野菜を栽培して、どうか自分で種を採っていただきたい。」ということです。
固定種の良い点は、自家採種できるという一点です。自家採種を三年も続けていれば、その土地に合った野菜に変わっていきます。

私も、なるべく固定種でやろうとしています。家庭菜園をするならそれのほうが面白そうです。

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執筆者:有賀知道

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