『高齢社会白書』

公開日:2020年9月11日 更新日:

『高齢社会白書』(内閣府)。
『高齢社会白書』(内閣府、2019年)。令和元年版。

高齢社会の全体像をみる

高齢社会白書は、平成7年に施行された「高齢社会対策基本法」に基づき、平成8年から毎年政府が国会に提出している年次報告書です。

高齢化の状況や政府が講じた高齢社会対策の実施の状況、また、高齢化の状況を考慮して講じようとする施策について明らかにしているものです。

日本の高齢社会の大まかな全体像を知るには適していると思います。

高齢社会白書の構成は毎年同じようなものなので、一度見方を覚えれば、気になるところを探すこともそう難しくはありません。(内閣府のサイト上に過去のものを含めPDFになっているので、書籍として買う必要もありません)

令和元年版の白書から何例か高齢化の状況を抜き出してみましょう。一般的に喧伝されているように、高齢者が持つ金が増えているとか、高齢者による交通事故が多くなってきたというのは違うということをデータが示しています。

現役世代2人で1人の65歳以上の者を支える社会

65歳以上の人口と、15~64歳人口(現役世代)の比率を見てみると、私が生まれた2年前1965年は、1人の65歳以上の者に対して10.8人の現役世代がいたのに対して、学生のときの1990年は5.8人、2020年では2.0人になっています。今後も低下し続けて、2065年には1.3人となる予想です。

日本は世界で最も高い高齢化率

国連の定義では、高齢化率(65歳以上の割合)が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」とされます。

2018年10月1日現在、日本の高齢化率は28.1%です。先進諸国で比較すると、日本の高齢化率は1980年代までは下位、90年代は中位であったが、2005年にはもっとも高い水準になっています。非常に速い速度で高齢化が進んだことがわかります。

具体的に、高齢化率が7%を超えてからその倍の14%に達するまでの所要年数(倍化年数)を比較してみると、フランスが115年、スウェーデンが85年、アメリカが72年、イギリスが46年、ドイツが40年に対し、日本は24年です。1970年に7%を超えると、24年後の1994年には14%に達しています。

アジア諸国でも同じようなところもあります。韓国が18年(2020年~2018年)、シンガポールが20年(1999年~2019年)、中国が24年(2001年~2025年)になっています。

世帯主が60歳以上の世帯の貯蓄現在高の中央値は全世帯の1.5倍

世帯主の年齢が60歳以上の世帯の貯蓄の状況についてみると、2017年において、貯蓄現在高の「中央値」は、1,639万円となっており、全世帯(1,074万円)の約1.5倍になっています。「平均値」は、2,384万円となっており、全世帯(1,812万円)の約1.3倍です。

少しさかのぼってみますと、平成28年版までは中央値はなく平均値だけが、60歳ではなく65歳以上が採用されていました。

たとえば平成14年版では、世帯主の年齢が65歳以上の世帯の貯蓄の状況についてみると、2000年において、一世帯平均の貯蓄現在高は、2,739万4千円となっており、全世帯(1,781万2千円)の約1.5倍となっています。

ちなみに、これまでの高齢社会白書を見てみますと、全世帯の貯蓄高に比べて高齢世帯は1.5倍という表現が好きらしいです(どういう意図があるのかわかりませんが)。

でも傾向とすれば、高齢世帯の貯蓄額の平均値は下がってきています。下がってきているけれども、絶対数が多くなってきているので、世代別金融資産分布における高齢者の割合が高くなっているのは当然と言えば当然です。

金融資産の分布状況を世帯主の世代別に見ると1989年に60歳以上が31.9%であったのが、2014年には64.5%になっています。倍以上に! と一瞬驚きますが、絶対数も倍以上になっているのを別のページで確認できれば驚きもおさまります。一人一人の高齢者の金融資産が増えているわけではないことを押さえておきたいものです。

それどころか、65歳以上の生活保護受給者は、100万人に達し増加傾向です。65歳以上人口に占める生活保護受給者の割合も2.89%で増加傾向です。

健康寿命と平均寿命と介護

健康寿命(日常生活に制限のない期間)と平均寿命の差は、男性が8.84年(80.98と72.14)、女性が12.35年(87.14と74.79)です。

都道府県別に表にしたものもあるので、見比べると面白いです。私の住んでいる群馬県は、男女とも平均寿命も差も全国平均よりも低くなっています。男女とも全国平均よりも長生きで、なおかつ差が全国平均よりも小さい、要するに健康長寿が山梨と静岡です。逆は、徳島と大阪です。

この健康寿命と平均寿命の差の時期は、介護が必要という人ももちろんで出てきます。介護が必要になったとき介護を頼みたい人は、男性の場合配偶者、女性の場合ヘルパーなど介護サービスの人が最も多いという調査結果には妙に納得と同時に、男性陣も頼られてもいいように、日ごろから心掛けておいたほうがいいとひそかに思うところです。

介護関連のところで、今後に一番不安を感じた数字は、介護関係職種の有効求人倍率が3.90倍にまで上昇していることです。リーマンショック前2.31倍だったものが、リーマンショック後に1.31倍まで落ちたが、その後どんどん上昇してきています。

75歳以上の運転者による死亡事故

高齢者の運転による死亡事故が多くなってきているような雰囲気がありますが、75歳以上の運転者によるここ10年間の死亡事故件数はほとんど変わっていません。運転免許保有者は増えているので、率とすれば下がっているということです。

同じように、65歳以上の犯罪者の検挙人数は微減傾向ですし、率とすればどんどん下がってきています。

高齢社会対策大綱は一度は見ておきたい

高齢社会白書には、高齢社会の状況だけでなく、政府が講じた高齢社会対策の実施の状況、高齢化の状況を考慮して講じようとする施策についても掲載されいています。

施策や実施の指針となるのが、「高齢社会対策大綱」です。白書にも付録として掲載されています。経済社会情勢の変化等を踏まえておおむね5年をめどに見直しが行われています。以前のは平成24年閣議決定されたものでしたが、現在のは平成30年に閣議決定されたものです。

田舎の高齢者ばかりのところに行けば行くほど役所の存在感が大きくなってきます。気にしないでいるつもりでも、何をやっているのか言っているのかスローガンが気になったりします。

大綱のような大本を辿ると役所の動きが少しは理解しやすいという効用はあります。

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執筆者:有賀知道

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