『地方消滅』

公開日:2020年11月7日 更新日:

『地方消滅』(増田寛也・編著、中公新書、2014年)。サブタイトルは、東京一極集中が招く人口急減 。
『地方消滅』(増田寛也・編著、中公新書、2014年)。サブタイトルは、東京一極集中が招く人口急減 。

南牧村が一躍有名に

本書で詳しく検討されている「消滅可能性都市」で一躍南牧村は有名になりました。本書のもとになっているのは、『中央公論』の2013年12月号、2014年6月号、7月号です。その6月号(2014年5月発売)に消滅する市町村523全リストが掲載され、そのトップが南牧村でした。

そのリストを発表したのは、日本創生会議(増田寛也・座長 )の「人口減少問題検討分科会」です。

もっとも、消滅可能性を測る確固たる指標はないので、使われている指標は「人口の再生産力」に着目した試みです。

リストは、若年女性(20~39歳)人口の減少率(2010年→2040年)が高い順に並べるというものです。減少率が5割を超える896自治体が「消滅可能性都市」に当たります(全自治体の49.8%です)。さらに2040年に人口1万人未満の523自治体について「消滅可能性が高い」とされます(全自治体の29.1%です)。

ただ、公共団体名を名指しで公表したため、その反響は大きくトップの南牧村だけではなく、896自治体の中には豊島区も入っていて騒いでいたのも記憶に新しいところです。

リストづくりのもとになっているデータは、2013年3月に国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の「日本の地域別将来推計人口」です。

編著者は、本書の対談の中で活動の動機をこう述べています。

一読すれば、日本の人口減少が本格化し、加速度的に進行していくことが明白なのですが、多くの人はまだ「ああ、相変わらず少子高齢化が続くんだな」ぐらいの認識なんですね。地方政治に関わり、人口減少の怖さを体感している実としては、これは非常にまずいと感じました。社人研の報告に地方から大都市圏への人口移動を加味して、近未来の日本にどんなに恐ろしいことが起ころうとしているかを、わかりやすく提示しようというのが、レポート(『中央公論』2013年12月号掲載)を作った動機です。

大都市圏への人口移動を加味したというのも、社人研の推計は、人口移動が将来、一定程度収束することを前提にしているからです。リストは収束しないという想定で作成されているということです。

本書では、日本では3度にわたって地方から大都市圏に大量に人口が移動したと指摘しています。第1期は1960~1970年代前半までの高度成長期。第2期は1980~1993年のバブル経済期。第3期は2000年以降の時期です。

現在まで続く3期は、1期2期と性格が違うと言います。1期2期が大都市圏の「雇用吸収力の増大」に由来するのに対し、3期は地方の経済力と雇用力の低下が原因になっているとします。3期は大都市圏において非正規雇用が増加するなど魅力ある雇用が増えていないにも関わらず、地方には職がないから仕方なく出ていかざるを得ない。

地方の雇用基盤そのものが崩壊しつつあることを意味しており、地方が「崩壊プロセス」に入りつつあることを示しているといえよう。

人口減少のプロセス

社人研の予測をもとに、本書では、人口減少のプロセスを3段階にわけて説明しています。

年少人口(14歳以下)と生産年齢人口(15~64歳)は2010年以降減少し続ける。一方、老年人口(65歳以上)は2040年までは増加し、その後横ばい・微減となり、2060年以降減少していく。その結果、総人口は2040年頃まではある程度の減少にとどまるが、それ以降は急速に減少する。

日本は、2040年までの「老年人口増加+生産・年少人口減少」の「第一段階」、2040年から2060年までの「老年人口維持・微減+生産・年少人口減少」の「第二段階」、2060年以降の「老年人口減少+生産・年少人口減少」の「第三段階」という三つのプロセスを経て、人口が減少していくことが予測されている。

現在は第一段階、少子化に伴う人口減少はあるけれども、同時進行している高齢化により高齢者数が増え続けていることで、見かけ上人口減少の問題が見えにくくなっていると言えなくもありません。

もっとも、3つのプロセスは日本全体のことで、南牧村など田舎はすでに明らかに第3段階です。地域によってばらつきが出てくるのは、先ほどの大都市圏への人口移動が関わってきます。

極点社会の出現

本書では大都市圏への人口移動のことを「人口のブラックホール現象」と呼んでいます。田舎で子育てすべき人たちを吸い寄せて地方を消滅させるだけでなく、集まった人たちに子供を産ませず、結果的に国全体の人口をひたすら減少させていく現象です。

その結果現れたのが今の極点社会と名付けられている現状です。限られた地域に人々が凝縮し、高密度の中で生活している社会です。

そもそも世界的にみて首都に一極集中しているのは、東京とソウルくらいだそうです。

国土交通省の「東京の一極集中の状況等について」を見ますと、日本の首都圏の人口比率は13.7%(1950年)から30.3%(2010年)まで上昇しています。欧米諸国と比較しますと、日本だけが上昇しているのがわかります。欧米諸国で最も集中しているパリでさえ、15.0%から17.2%の間で安定しています。

極点社会は他の先進諸国では見られない日本特有の課題です。

人の移動もそうですが、「グローバル企業には、本社を東京に置いている会社が圧倒的に多い」「米国企業のトップ100のうち、ニューヨークに本社を置くのは四分の一。日本では7割が東京」「みんな丸の内にいるというのは、世界から見れば異様な光景」と一極集中を批判しています。

日本全体の出生率を引き上げ、「人口減少」に歯止めをかけるためには、人口の大都市圏への集中という大きな流れを変えなければならない。

回避法として防衛反転線の構築

大きな流れを変えるために本書で提唱している一つが「防衛・反転線」の構築です。山間部も含めたすべての地域に人口減抑制のエネルギーをつぎ込むのではなく、地方中核都市に資源を集中し、そこを最後の砦にして再生を図っていくというものです。わざわざ東京に出て行く必要のない若者を地方に踏みとどまらせるという構想です。

中核都市への選択と集中は、限られた財政を全国の市区町村に満遍なく振り分けるのではなく、圏域単位に有望な産業や雇用の芽を見出し、若い人たちの雇用の場の開拓に集約して用いるということとしています。どのような産業開発、雇用創出を行うかはそれぞれの地域状況により異なると説きます。

選択と集中は、中山間地域や離島を切り捨てることではないかという意見に対してはこう答えます。

中山間地域や離島から若者が流出しないことが最も望ましいが、これまでの施策では流出が止まっていないことも認識しなければならない。であれば、出て行く場合でも東京圏に行くことを防ぎ、圏域内に留まらせることが重要である。

親世帯の住居から車で1時間ぐらいの圏域内に若者が留まれれば、育児や介護で相互に支え合える仕組みを再構築できるのではないか、と。そのためにも拠点都市を整備することが求められると強調します。

財政的に作り出された雇用が40%とは

圏域単位で雇用の場の開拓に選択集中できるかどうかはともかく、地方での雇用の確保こそが肝というのは疑いようもありません。本書の編著者と対談する樋口美雄・慶大教授は言います。

人口の社会移動を止めるため、地方に魅力ある雇用機会をどう創っていくかは、今日の最も重要なテーマですね。

ただ、近年、地方の雇用を作り出しているのはもっぱら医療や介護だったが、高齢者の絶対数が減少する地域が増加するので雇用拡大は期待できないと、樋口教授は補足します。

これら社会保障給付を含めて、地方では財政的に作り出されてきた雇用が非常に大きいと説明します。たとえば2000年ごろの高知県では、公共事業や公務員、派生効果まで含めると、就業者全体の40%近くが財政的に作り出された雇用という試算をしています。これも削減の流れになるのは致し方ないことです。

たしかに、東京にいたときはわからなかったが、田舎に来れば財政的に作り出された雇用がいかに多いかすぐに実感できますね。

ちなみに、地方の中核都市で見ると、地域経済はざっくり言って、年金、公共事業、それ以外の「自前」の産業がそれぞれ三分の一ずつで回っているそうです。

どれだけ多くの人が、自分たちの街に自らの力で雇用を作っていこうとするかが、結局は大事になる。外部人材を活用するにしても、そういう考えの人を増やし、彼らが活躍できる場所を作っていくこと。これが重要だと思います。

樋口美雄・慶大教授

これからの地方には、財政的に作り出されたものに依存しないで、マーケットを見て稼いで雇用を作り出せるような人が本当望まれているということでしょう。

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執筆者:有賀知道

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