本書のおかげで、生ゴミを土にもどせるようになりました。週一回のゴミ収集日には、45リットルのゴミ袋ですかすか状態で出せるようになってきました。
生ゴミをゴミ収集日に出さなくなった
やろうやろうと思っていたが、なかなか手を付けられずにいたことの一つが、生ごみコンポストです。本格的に田舎に暮らして3年以上経過しています。
田舎ではどこでも釣り鐘型のコンポストをよく見かけます。よく見かけるというよりは、ほとんどの家庭が一つは敷地内かどこかに設置しているのではないでしょうか。が、残念なことにうまく活用しているという話はあまり聞きません。放置状態のものも多いような気がします。
これも、これまで生ごみコンポストに踏み切れなかった、という言い訳ではあります。
ともあれ失敗の原因は、コンポストをゴミ箱代わりに使っていることにあるようです。そもそもコンポストとは堆肥のことであるにもかかわらずです。
せっかくの装置ですからみごとな堆肥をつくって、野菜栽培にチャレンジしてください。それには、生ごみ、雑草、落ち葉などの性質と、堆肥づくりの基本を理解しておかなければなりません。
堆肥づくりと言われるとまた敷居が高くなりますが・・・
コンポスターを昔のごみ箱代わりに使っても、ふたをあけるときの不快感と悪臭が我慢できれば、四人家族で130リットル入りのものが一基あれば、一年中生ごみの処理ができます。
生ゴミは放っておいてもいずれは朽ちていくと考えれば気が楽です。でもだいたいは、この不快感と悪臭に勝てずに放置になってしまうというわけか。最悪この状態で、これを徐々にコントロールするぐらいの感覚で始めればいい。著者のやり方が参考になります。というか、これで私もやろう! と決めました。
私自身、小さな庭で生ごみの処理をかねて堆肥づくりのまねごとをしています。はじめは堆肥づくりにはほど遠い穴の中に生ごみを入れるだけの最も簡単なものから、次は穴に入りきれなくなった落ち葉や雑草を、コンクリートブロックとU字溝を組み合わせただけの小型の枠の中に入れ、それに悪臭が出ない程度に生ごみを混ぜて堆肥をつくる二本立てで、この二〇年間やってきました。最近は、ハエやコバエが発生する春から秋の期間は、生ごみほとんど全部をコンポスターに入れています。やり方は、みんな違ってよいと思います。
運よく今は冬。早速畑の一角に穴を掘って生ゴミ投入、土をかけるという作業を昨年末から始めています。以来、生ゴミをゴミ収集日に出すことはなくなりました。週一回のゴミ収集日には、45リットルのゴミ袋ですかすか状態で出せるようになってきました。
でも悪臭の季節になる前に、堆肥づくりの理解をより深めておかねばなりません。
現時点での理解では、養分が多く分解しやすいものほど悪臭はすごい。とくに水分が多く、空気が少なくて微生物が窒息してしまうような環境で強烈になる。なので、養分をうすめ、水分を調整、空気を通すというのが解決策になります。中でも最重要なのは、生ゴミは水分が異常に多いので、水分をいかにうまく管理するかです。どうやって乾燥させるか、そのうちにいい案が浮かんでくる予定です。
有機物を堆肥化するときの最適水分は、六〇~六五%程度です。この作業が完全に行われれば、堆肥化処理が成功するかしないかの七〇~八〇%は決まったようなものです。
堆肥づくりも水分調整がキモのようです。
健康な土をつくるのが堆肥
もちろん、本書はコンポスターを使った家庭園芸用の堆肥の作り方を解説だけする本ではありません。堆肥づくりに先立ち、堆肥を理解するための基本知識が本書のメインです。
『農業聖典』『土と健康(邦訳:ハワードの有機農業)』にならって、健康な土が健康な作物を作る、その健康な土をつくるのが堆肥なのだから、堆肥は使ったほうが、そして作ったほうがいいという話から始まります。そして、堆肥ができる仕組み、実用化されている堆肥原料を概観します。実用化されているものとは、家畜糞尿、木材廃棄物、都市ごみ、下水汚泥、製紙スラッジ、し尿処理汚泥、食品製造かす、家庭・田畑から出る廃棄物です。
有機物なら何でも堆肥化して農業利用すればよいと考える人が多いのですが、堆肥づくりは、そう簡単なものではありません。まず堆積前の水分と養分、炭素率の調整、発酵中の切り返しのタイミングや回数、養生期間の手当てなど、目にみえない、ものをいわない微生物が相手ですから、これほど難しいことはありません。
としつつも、ハワードの『農業聖典』を引用して、「どれだけの水量が(堆肥)積み込み時に必要であるかは、体験がやがて教えてくるであろう」と取り組もうとする人の背中を後押ししてくれます。
ハワードが推奨したように、性質の異なる様々な有機物を混ぜて堆肥づくりをすれば、よい堆肥ができあがると喝破しているので、とにもかくにもやってみることだと思っています。
本書はたしかに堆肥づくりの敷居を下げてくれます。やってみようかなという気にさせてくれます。ただ、堆肥の作り方、使い方の具体的な説明はそれほどありません。それについては、次に紹介する『堆肥の作り方・使い方』(藤原俊六郎・著、農文協)で触れることにします。