『月3万円ビジネス』

公開日:2020年1月30日 更新日:

『月3万円ビジネス』( 藤村靖之・著、晶文社、2011年 )。
『月3万円ビジネス』( 藤村靖之・著、晶文社、2011年 )サブタイトルは、非電化・ローカル化・分かち合いで愉しく稼ぐ方法。

自分の居場所をつくって、顧客を見つける

これまで紹介した3冊(『60分間企業ダントツ化プロジェクト』『戦略プロフェッショナル』『ザ・プロフィット』)は、ざっくり言えば、会社や商品、自分の居場所(ポジション)をつくって、顧客を見つけ出してビジネスにしていくために参考になる本といってもいいでしょう。

居場所をつくるためには、他と比べてどうなのか、を明らかにすることは極めて大事だということを教えてくれます。なぜなら、そうしないと顧客から選んでもらえないからです。同じようなモノやサービスを提供するところが出てきて競い合う状況が前提になっています。なので、ビジネスの種を見つけ出して、利益につなげていくだけではなく、その後の状況の変化にも対応して生き残るために役立つことは間違いありません。

ただ、競争範囲が地域コミュニティや国単位ぐらいでで収まっていれば、相手の顔も見えますし、共同体意識がまったくないところよりは、過当競争になりにくい気はします。しかし現状は、国境はなし、遮るものは何もないかのごとく、世界単一市場での競争にまで進んでいます。しかも、どんどん歯止めがきかなく、悪化しているように見えます。 分散されていれば、この地域はダメだが、アッチは大丈夫みたいにバラけますが、単一ですから、危なさも不安定さも半端じゃありません。お金持ちもどんどん集中して偏ってきます。要するにグローバリズムの弊害です。

グローバル競争の中で、勝ち残れるところは、「効率・便利・スピード」で他よりも一歩先を行くところなのか、とアマゾンを見ていて思います。

いましばらくはグローバリズムの中での不安定な状況が続きそうです。もっとも、影響下にあったとしても、すすんでグローバルの熾烈な競争に参加する必要はないのですし、暗くなる必要もありません。この中でどうやって安定させていくのかを考えたほうが賢明です。そのためにも、自分の居場所(ポジション)をつくって、顧客を見つけ出してビジネスにしていく力があればこの上なしということです。

非電化思考のすすめ

実は、さきほどの「効率・便利・スピード」というフレーズ、「快適・便利・スピード」からもじってみました。「快適・便利・スピード」は、電気がもたらすものを説明するのに著者が使っているものです。

著者は、『非電化思考のすすめ』において、「電気は豊かさをつくり、豊かさをうばってきた」と書いています。大量の電気を消費し「快適・便利・スピード」で突き進み、その結果、圧倒的な経済成長と、物質的に豊かさを手に入れました。でも失ったものもあるというわけです。

地域コミュニティ、美しい環境、ストレスの無い安らぎ、美しさや優しさを感じる感性、活き活きとした健康、自然治癒力や免疫力、温もりのある人間関係、自給力、ものづくりや生産の愉しさ、手足を使い技を磨く喜び、感性を磨いて五感で味わう自然

『月3万円ビジネス100の事例』

著者は、非電化製品(非電化冷蔵庫・非電化掃除機・非電化住宅など)の発明・開発を通してエネルギーに依存しすぎない社会システムやライフスタイルを提案しています。那須に工房を構え、テーマパークさながらに見学会も盛況のようです。

依存しすぎないということなので、電気すべてを否定するものではありません。電気は高級なエネルギーなので、電気でなくては動かないものにしか使わない、というスタンスです。しかも、エネルギー需要を減らす方策を議論した上でです。節電だとか、エコ、反原発と言いながら、オール電化の家に住んで、電気自動車を乗り回して矛盾を感じない人とは根本的にスタンスが違います。

支出は1/4に、収入は1/3に、働く時間は1/2に

非電化思考が現代社会に問うているのは、エネルギーやお金に依存しすぎないライフスタイルにしたほうが幸せに近づけるのでは? ということだと思います。そして、依存しすぎないための提案が、非電化の暮らしであり、3万円ビジネスです。

『非電化思考のすすめ』で説明しているイメージとすれば、支出は1/4に、収入は1/3に、働く時間は1/2ぐらいの感じです。詳しくはこの本を読んでもらうのがいいですが、一番難しそうなのは、支出を1/4にするところでしょう。

支出を4分の1にすることは、時間さえあれば十分に可能です。時間に追われていると、支出を減らすことが非常に難しいのです。時間を節約するためには、タクシーを使ったり、外食をしたり、家賃の高い都会に住んだりしなければなりません。実は、支出を減らすために大切なのは、「時間の余裕」なのです。
住居費の安い田舎で暮らし、週に3日だけ働いて、残りの4日は仲間と愉しく野菜をつくったり、家を建てたり、エネルギーを生み出したりすることに精を出す。そうすれば、必ず支出を4分の1くらいまで減らすことができるはずです。

田舎でする3万円ビジネスとは

しかし、田舎では仕事がないために人が減り、人が減ったためにさらに仕事がなくなるという悪循環に陥っています。そこで登場するのが3万円ビジネスです。仕事創りを深刻なものにせず、ゲーム感覚で仕事創りをするために、と考えて編み出されたものです。

  • 非電化の暮らし方を学ぶワークショップで3万円ビジネス
  • ヒト・モノ・コトをつなぐ有機化の3万円ビジネス。例えば、生産者と販売者と消費者をつなぐ。有機化こそがグローバリズムに対抗できる。
  • 物質的に豊かになったが、それによって失ったものを埋め合わせる3万円ビジネス

というような方向性で考えられた、20個ほどの3万円ビジネスを取り上げています。3万円ビジネスのルールとして、「いいことしかしない」には大賛成です。さらに、興味がある人は、『月3万円ビジネス100の事例』という本も出ていますので、そちらもどうぞ。8割ぐらいは誰かが実施した例だそうです。

もちろん、3万円では暮らせないでしょうから、複数の3万円ビジネスを手掛けることになりましょう。個人的には無理やり3万円ビジネスだけで完結させなくてもいいように思っています。収入を少なくしても大丈夫なように支出を抑える生活スタイルを前提として、基本的な収入は確保しておいて、3万円ビジネスは、収入のプラスα、自営をするための練習、ビジネス転換のネタ探し、本当の豊かさを手に入れるためという位置づけにするのでもいいように思っています。

「奪い合わないで分かち合う」というのも3万円ビジネスのルールです。3万円以上稼げるようになったら、抑制して、分かち合うようにするというものです。これは、基本的な収入部分(得意分野)だけは、上限をあげてもいいようにも感じます。

稼ぐためには、最初から浅くいろいろ取り組むよりも、一定の時期は、一つのことに深く取り組んでノウハウを身につけるほうがいいと思うからです。それを分かち合ったほうが質が高まる気もします。3万円ではあっても、お客さんを向いたサービスにしなければ、成り立ちませんから。

個人的には、今後ビジネスとしてというよりも、隙あらば生活への取り入れ(てみたいな~)リストを作ってみました。本書に登場順に並べると、雨水ビジネス、 薪ビジネス、太陽熱温水器ビジネス、無農薬緑茶自家栽培ビジネス、酵母ビジネス、『月3万円ビジネス100の事例』から、非電化冷蔵庫をつくる、在来種の種子を売る、コンポストをつくる、井戸を掘る、油を搾る、亜麻ビジネス、中古の太陽光発電、となりました。

3万円ビジネスは「いいことしかしない」ので、事例を通して、現状の何が問題なのかも垣間見えます。

本書では、「日本茶に適用されているアセタミプリドはの残留基準値は50ppmです。大騒ぎされた輸入米毒性物質の5000倍です」「日本人は平均すると地球を4分の1周運ばれた食料を口にしている」。『月3万円ビジネス100の事例』から、「塩の量が少ない味噌を甘口味噌とよく言うが、そうではなくて麹の量が多いのが本当の甘口味噌だ」「普通の植物油というのは、大豆や菜種を絞るのではなくて、ヘキサンなどの抽出剤で油を抽出する」「太陽光パネルが生み出す電力の5年分を製造段階で消費すると言われている」。『非電化思考のすすめ』では、「日本中の車が電気自動車になると、原発209基分の新たな電力需要が生じます」・・・などです。

経済が地域で循環する社会に移行する

地域の悪循環ーー仕事がないために人が減り、人が減ったためにさらに仕事がなくなるーーという問題を引き起こしたマインドセットとは、「中央集権型・成長型システムを前提とした従来型の地域の役割の中で生きる」という考え方でしょう。「公共事業・補助金・企業誘致・観光・特産品」の5点セットが、その特徴的なパターンです。

『非電化思考のすすめ』

田舎には仕事がない、という問題を解決するために、3万円ビジネスが考案されました。ただ、今後もずっと仕事がないという認識ではないです。過渡期であるからこそ、3万円ビジネスで仕事を創りやすくすることが大事だと理解できます。

この国のシステムは、いずれは中央集権システムから地方分権型・地域循環型のシステムに変わらざるを得ないでしょう。地域循環型への転換に伴って、地方には仕事が溢れることになるでしょう。しかし、その転換にはGNPの大幅な減少、利権の喪失、一時的な雇用の喪失などの痛みや混乱を伴うために、大きな転換は経済破綻などの重大な閉塞の後に訪れると思われます。問題は、それまでの間に、すなわち、国全体の社会システムや経済システムが大きく変わらない過渡期に、地方に仕事を創れるかどうかです。

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執筆者:有賀知道

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