『私はどうして販売外交に成功したか』

公開日:2020年2月8日 更新日:

『私はどうして販売外交に成功したか』(フランク・ベドガー著、ダイヤモンド社、1964年)。
『私はどうして販売外交に成功したか』(フランク・ベドガー著、ダイヤモンド社、1964年)。

デール・カーネギーが推薦

1章の「自分の仕事に情熱を持て」の項は、情熱の力というものについて、私が今日までいろいろ聞かされた話のうちで、最も強い感銘を受けた文章である。情熱こそは、フランク・ベドガーを失意のどん底から救い上げて、一躍全米きっての最高給を得る大セースルマンに転換させる力となったものである。

本書こそ、私が今日までに読んだ販売術に関する著書のうちで、もっとも有益で、最も示唆に富んだ労作である。

私が販売の仕事にたずさわるようなことにでもなったとしたら、本書を一冊手にするためには、シカゴからニューヨークまででも、喜んで歩いてゆくつもりになることは間違いないとさえ思っている。

『人を動かす』のデール・カーネギーが推薦の言葉を述べています。一読すれば、ちっとも大袈裟でないことがわかります。

今は簡単に手に入れられるので、簡単に読み飛ばして、面白かった、と深く心に刻むことなく忘却のかなたになりがちかもしれませんが、シカゴからニューヨークまで歩いていっても損はないぐらいの内容ということはお忘れなきよう。

グローバリズムに対抗するために

本書が刊行されたのは1964年です。たしかに、ベドガーが活躍した時代とは状況が違います。しかし、その内容は今も色あせません。なぜなら、いまでも巷にあふれる販売術のノウハウの多くは、本書の内容の一部分を薄めてバラまいているものです。ベドガーがもとだと知らずにバラまいている人もいるでしょうし、ひどいのになれば自分で考えたかのようにしてバラまくのもいます。

色あせないどころか、グローバリズムの渦の中に巻き込まれないために、がぜん輝きを増してきたと言ってもいいほどです。特に、自営業や中小の会社の戦略にとっては大事です。

私のセールスマンとしての生涯を振り返ってみて、私がいちばん遺憾に思うことは、顧客を訪問して、その利害関係を十分に研究し、これに対して完全なサービスをするために、十二分の時間をかけえなかったことである。これは私の偽りのない告白である。事実、私が顧客に対して徹底したサービスを完全にやっていたならば、それほど気苦労もせず、また肉体的にもあまり多くを労せずして、もっと大きい収入を得、もっと大きい幸福をつかんでいたはずで、このことは私の過去の記録の中から多数の実例をあげて立証することができる。

私がもし、今日までのセールスマンとしての生涯をもう一度初めからやり直してみることができるなら、私は「けっして顧客を忘れてはならない。と同時に、顧客からもけっして忘れられてはならない」というモットーを守り神として、これを自分の目の前の壁に掲げておくに違いない。

前回紹介した『3万円ビジネス』のグローバリズムに対抗するためには、有機化が一番、というのに通じるものがあります。

さらに、この文章、どこに書いてあるかというと、「新しい顧客を得るには」です。いま目の前にいるお客さんや既存客を大事にすることこそ肝要で、そのためには準備が大事ということです。

相手に行動を起こさせるために

ベドガーは、生命保険の外交員です。結局のところ販売実績がすべてです。いくらいい話ができても、お客さんに買ってもらうという行動を起こしてもらわないと仕事になりません。「販売に成功する7つの原則」には、販売メモなどで現状の把握をしっかりして改善しておいた上で、1.相手の注意をひくこと、2.興味をおこさせること、3.欲しいという気持ちにさせること、4.商談の成立、という流れで商談をイメージします。そのときのポイントとして7つを挙げています。

  1. 結論は最後の止めをさすときまで出さないこと
  2. 要点をかいつまんで話すこと
  3. 言葉の魔術を活用すること
  4. 反対する客を歓迎すること
  5. どうしてですか? そのほかに何かわけがあるのではありませんか? というという問いかけをする
  6. ここに署名してくださいと見込み客に頼む
  7. 契約と同時に小切手をもらう。金を受け取ることを遠慮してはならない

これを、縦9cm、横15センチのカードに印刷して、ポケットの中に入れていたそうです。

たとえば、要点を要領よく話すことについて、「セールスマンが失敗する原因」の章の中でも取り上げています。しゃべりすぎが失敗のもととして、この悪い癖を直すために、日常生活においても、要点から離れた細かいことをしゃべりだしたときは、妻に頼んで止めてもらうということもしています。

こうして要点だけを要領よく話すコツを覚えていったそうですが、それでも、お客さんお前で、細かいことをしゃべり続けたいという衝動にかられて、うっかりすると15分もしゃべり続けて、ふと退屈そうな相手の表情に気づいて、あわてて話を中止するようなこともたびたびである、と記しています。

聞き上手が成功への道

しゃべりすぎが失敗のもとなので、逆に、聞き上手は成功への道です。下手なセールスマンは、しゃべりすぎの上にこんなこともやってお客さんを不愉快にさせます。

誰でも、話の途中でまだいわないさきに、いおうとしていることはわかっているという口ぶりで、口出しをされたり、出し抜かれたり、話をさえぎられたり、話を取られたりすることは不愉快である。

相手が機嫌がよくても自分の話に関心をもってらうのにも難しいのに、不愉快な状況の中で、自分の話だけを聞いてもらうということができるはずもありません。

ベドガーの生涯に重大な影響を与えたのが『ベンジャミン・フランクリン自伝』です。フランクリンの言葉が紹介されています。

人と対談する場合には、自分の舌でしゃべるよりもむしろ耳で聞くことによって、知識は得られるものだと考えたので、私は自分で行わなければならないと決心したいろいろの善行の中で、沈黙ということを第一位においた

一位において自分を律しないといけないほど、フランクリンの若かりしときの弁舌は凄まじかったということでもありますが、ベドガーも同じく、相手の話をよく聞くことを大事にしています。

聞き上手は、「反対する客を歓迎すること」も可能にします。反対する客に、しゃべりで対抗すれば激突になります。しかし、質問をするというスタンスで臨めば、うまくいく可能性がグンと上がります(もちろん、質問の仕方によありますが)。少なくと激突は避けられます。

13項目の実行

シカゴからニューヨークまで歩いていっても損はないぐらいの内容にもかかわらず、個人的には、 あらかたの内容を忘れてしまい、再読して、まずは、6時クラブ(早起きして仕事をしだす)と、週間計画表をつくることを復活させました。いくらいい本を読んでも、実行し続けなければ効果は上がりません。

これもすっかり忘れていましたが、ベドガーは、フランクリンの13徳をもとに自分流にアレンジした13項目を実行していました。そして、読者にも実行することを勧めます。なぜなら、成功への道だから。実行し、わがものとすればどうなるか?

もう誰の目から見てもあなたという人物が、まったく生まれ変わった別人のように人からは敬われ、愛され、仕事の成績はグンと上がって、大人物となっていることを私はさらに確信する。

  1. 情熱
  2. 秩序 ―― 自分自身の行動を組織的にすること
  3. 他人の利害関係を考える
  4. 質問
  5. 中心問題
  6. 沈黙 ―― 相手の話をよく聞くこと
  7. 誠実 ―― 信用を得るに値することをする
  8. 自分の事業に関する知識
  9. 正しい知識と感謝
  10. 微笑 ―― 幸福感
  11. 人の名前と顔とを記憶すること
  12. サービスと将来の見込みに対する予想
  13. 販売を取り決める ―― 購買行動を起こさせる

ちなみに、フランクリンの13徳は以下です。

  1. 節約 ―― 飽くほど食うなかれ。酔うまで飲むなかれ。
  2. 沈黙 ―― 自他に益なきことを語るなかれ。駄弁を弄するなかれ。
  3. 秩序 ―― 物はすべて所を定めて置くべし。仕事はすべて時を定めてなすべし。
  4. 決意 ―― なすべきをなさんと決心すべし。決心したることは必ず実行すべし。
  5. 倹約 ―― 自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。すなわち、浪費するなかれ。
  6. 勤勉 ―― 時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて断つべし。
  7. 誠実 ―― 詐りを用いて人を害するなかれ。心事は無邪気に公正に保つべし。口に出ですこともまた然るべし。
  8. 正義 ―― 他人の利益を傷つけ、あるいは与うべきを与えずして、人に損害を及ぼすべからず。
  9. 中庸 ―― 極端を避くべし。たとえ不法を受け、憤りに値すと思うとも、激怒を慎むべし。
  10. 清潔 ―― 身体、衣服、住居に不潔を黙認すべからず。
  11. 平静 ―― 小事、日常茶飯事、または避けがたき出来事に、平静を失うなかれ。
  12. 純潔 ―― 性交はもっぱら健康ないし子孫のためにのみ行い、これにふけりて頭脳を鈍らせ、身体を弱め、または自他の平安ないし、信用を傷つけるがごときこと、あるべからず。
  13. 謙遜 ―― イエスおよびソクラテスに見習うべし。

ベドガーは、1.節約について、「満腹して活動力が鈍るほど大食いしてはならない。己を忘れるまで酔うほど飲酒してはならない」と説明しています。昔は、なぜこれが1なのか理解できませんでしたが、最近は1の大事さをしみじみと感じています。

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執筆者:有賀知道

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