『自給自足の自然菜園12カ月』

公開日:2020年5月2日 更新日:

『自給自足の自然菜園12カ月』(竹内孝功・監修、新田穂高・著、宝島社、2016年)。
『自給自足の自然菜園12カ月』(竹内孝功・監修、新田穂高・著、宝島社、2016年)。副題は、野菜・米・卵のある暮らしのつくり方。

畑のステージを知る

実家の敷地内に15年ぐらい前から耕作していなかった元の畑がありました。50㎡ぐらいの広さで、初めて家庭菜園をやるにはちょうどいい広さです。

再びそこで作物を栽培するために、まずやったことは、畑の状態を知ることでした。どんな草が生えているかによってある程度はわかる、と本書にあります。昨年の10月の時点で生えていた中でわかったのは、2つだけでした。白クローバー(シロツメクサ、マメ科)と猫じゃらし(エノコログサ、イネ科)です。

白クローバー(シロツメクサ、マメ科)はすぐわかる。

白クローバー(シロツメクサ、マメ科)はすぐわかる。

本書でみると、シロツメクサはステージ1に生える草です。酸性土壌で痩せている土のステージでスギナやカタバミなどと同じ類です。

ちなみに、ステージ0は、ススキやヨモギ、セイダカアワダチソウで草原状態。ステージ2のシロザ、アカザ、カラスノエンドウ、スズメノカタビラ、ツユクサなど、そして、ステージ3のオオイヌフグリ、ハコベ、ナズナ、ホトケノザ、ハキダメギクなどへと肥沃な土壌になっていく。肥沃な土壌では様々な野菜が自然に育つということになります。

畑では、4月になるとスギナも確認できました。やはりステージ1のようです。

土の状況がある程度わかったとして、問題はどうするかです。大きく2つの方向があるように思います。

  1. 堆肥などを入れて、肥沃にして、さまざまな作物を育てる。
  2. 今の土の状況にあった、作物から育てる。

1では、種まき前に堆肥や肥料などを入れて土づくりをしておくというものです。初年度からさまざまな作物を作りたい場合でしょう。

2は、土のステージにあった作物を育てながら、土づくりをしていって、少しづつステージの高い野菜を取り入れていくようにする方法です。

急いで特定の作物をつくらないといけないわけではないので2の方法をとることにしました。本書で、シロツメクサやスギナが生えるステージ1の土に適した作物として挙げられていたものが、ジャガイモ、サツマイモ、エダマメ、大豆、麦、マメ科緑肥作物などです。それらの中から、周りの畑でも作っているようなものから始めることにし、取り組んでいるところです。

自然に野菜を育てる家庭菜園

本書は、月刊『田舎暮らしの本』に2014年~2016年に連載された内容をまとめ、加筆修正したものです。昭和62年(1987年)に創刊され、田舎暮らしに関心がある人なら一度は手にとったことがあると思います。

田舎に移住したい人、夢見る人をターゲットにして、田舎暮らしが実現したあかつきには、大自然の中で家庭菜園はいかが、と誘います。これを読んでますます田舎に行きたくなった人も少なくないでしょう。実際私も連載当時、畑の風景や作業の写真を見ては気分よさそうだと思ってました(雰囲気だけ感じて内容はまったく理解してませんでしたが)。

竹内さんが実践している「自然菜園」は、自然に野菜を育てる家庭菜園です。耕さず、草をはやして、作物を肥料に依存せず育てる自然農法を、誰でも比較的スムースに始められるように工夫しています。

菜園を始めるにしても、最初は、右も左もわからない状況です。自然農法ならなおさらです。でもやらなければ何も進まないので、とりあえず何かやりだすほかありません。畑の準備はどうするか、何を栽培するのか、どのように種をまき苗を植えるのか・・・初めての経験で新鮮だ、と喜んでばかりいられません。時間はどんどん過ぎていくので、適切なタイミングで判断できないと、栽培したかった苗を買いそこなった、ということも起こります。

初めての人には、やはり解説は詳しいほうがいいと思います。本書は、写真やイラストも多く具体的にどうすればいいのかまでわかるのがいいところです。そのやり方を全部採用するかどうかはともかく、何か困ったときに、どうしたものかとパラパラと本をめくれば、何かしら判断の参考になることが書いてある感じです。

ジャガイモ栽培の例

私がジャガイモの植え付けしたときにも、本書を大いに参考にさせてもらいました。買ってきた種芋を植え付けるまでどのように扱うのか、芽をどうするのか、どう植えるのか・・・至れり尽くせりです。その時に書いたものが ジャガイモの種イモを植える。 です。 

他の人から話を聞いたり、他の本やサイトの情報を見ましたが、それらの情報をどう位置付け、比較検討するためにも、最初に暫定的にでも一つのやり方を知っておくことは大事な気がします。

自然に寄り添った手助けも必要

竹内さんが「自然菜園」を自然に野菜を育てる家庭菜園と言っているのは、暗に自然に野菜を育てないやり方もあるということです。化学肥料や農薬を使えば不自然な場所でも野菜が育ちます。自然に育てようとすれば自然に寄り添うことが必要だと言っています。

自然に寄り添うとはどういうものか、カボチャ栽培の例です。

本書では、「やせた畑には植え付け一カ月前までにクラツキを補います」とあります。クラツキとは、種を植える位置に深さ20cmほど穴を掘り、そこに完熟堆肥一握りを入れて埋め戻して馬の鞍型に少し盛り上げることを言います。本書にはその詳しい説明がなかったのですが、『家庭菜園でできる自然農法』で自然農法の実践者が5人ほど取り上げられている中に竹内さんもいて、その中で理由を語っています。

カボチャなら、お母さんカボチャが腐ったところに新芽が出るのが自然です。つまりそこは、お母さんが自分の亡骸で子供のために肥やしてくれた場所です。なので、それほど肥えていない場所でカボチャを育てるなら、タネをまく前に堆肥を埋めて10cmほど小山型に盛り上げた「鞍つき」をつくっておき、お母さんカボチャが腐ってできた環境をつくってあげてから育てると自然に育ちます。野菜と風土が合えば放っておいても育つ状態になりますが、それまでは自然に寄り添った手助けも必要です。

先に、「自然農法を誰でも比較的スムースに始められるように工夫している」と言いましたが、こういうことです。状況によっては 堆肥や米ぬか、油かすなども利用し手助けしようとします。

自然菜園12カ月、一番の注意は夏

自然菜園12カ月とタイトルになっている通り、12カ月の移り変わりの中で、いつ何をするのか、前もって見通しを持つことができるのも初めての人にはありがたい。

その中で最も注意が必要なのは夏の時期だと指摘しています。夏を制する者は一年を制す、と。

一年で最も畑に通いたいのは梅雨入りから梅雨明け後1週間ほどの時期です。草の勢いが強く、遅れずに刈らなければなりません。初めて夏野菜を育てる人は植え付けを終えてホッとするする時期だけに油断しがち。草刈りが遅れて失敗するケースが多いので注意してください。

草刈りが遅れて野菜を覆ってしまう。これでは野菜は育ちません。野菜の光合成が妨げられるということと同時に、根の戦いでも劣勢に置かれてしまいます。

畝のなかで育つ根の量は決まっていて、草の根が増えて野菜の根が育たないのが「草負け」です。

草負けにならないように、梅雨明けまでは野菜の葉の先から15cmのドーナツ状の範囲は地際から草を刈り取り、その外側の草は、野菜の光合成を妨げないようにするため、野菜の丈を越えそうになったら15cmの高さで刈るようにする。こうすれば草は再生し、草マルチの材料に事欠かなくなります。

そして、梅雨明け10日に畝全面の草を地際から刈って草マルチにします。

梅雨明け後は雨が降らず、真夏の炎天下が続くが、それまでの草マルチが野菜の根を高温乾燥から守ってくれる。こうして野菜の根をしっかりと張らせてしまえば、その後野菜の株元の草は抑えられる。

野菜は根が伸びるほど元気に長生きする。「根をイメージして栽培するのが大切です」と竹内さんは言ってます。先ほどのクラツキもそうですし、若苗を選ぶこと、植え付けの時に前の晩からたっぷりと水を吸わせること、とアドバイスするのも根をしっかり張らせるためにです。

自分の都合に合わせたプラン

家庭菜園と言っても、関わり度合いも人それぞれです。毎日畑に出られる人から週に数日の人、週末だけの人、月に数日の人まで。自分の都合を踏まえて、どれくらいの広さで栽培をするのが適当か、そこで何を育てるか、そして具体的に、いつ、どの畝で何を育てるかも考えておくことも必要になってきます。

自然農の場合、一度畝を立てたらいつまでもずっと使い続けるということも言われます。壊れたら修理し、耕さず使い続けることで、そこに生きる草や虫など多くの生命が豊かな畑をつくってくれると考えるからです。とすると、事前のプランニングはさらにきっちりしておかないといけません。

本書がいいのは、都合に合わせたプランを提示してくれるところです。

  • 月に2~3日作業の20㎡の基本プラン。夏畝と冬畝。目標野菜自給率50%。
  • 月に2~3日作業の20㎡の省力プラン 。夏畝と冬畝と連作畝。目標野菜自給率30%。
  • 週一日作業の35㎡のプラン 。夏畝と冬畝と連作畝。目標野菜自給率80%。
  • 週数日作業の100㎡の自給菜園プラン 。夏畝と冬畝と連作畝。目標野菜自給率100%。

野菜はこまめに手をかける必要のあるものと、種さえ蒔けばそれほど手のかからないものとがあります。作業時間に対して面積が広い場合は、手のかからないものを中心にプランしましょう。

手のかからないプラン、例えば省力プランはこうした作物を多く取り入れるということです。具体的には、デンプン系(ジャガイモ、サツマイモ、カボチャなど)やネギ類です。

逆に、キュウリやピーマン、ナスなどは獲れば獲るほどよくできる野菜です。こうしたものは、こまめに畑に出られる人向きです。

プランニングでは、連作のことも考えておく必要があります。夏畝と冬畝の場所を毎年交換すること。逆に、サツマイモ、ダイコン、ニンジンなど連作したほうがいいものや、ネギ、タマネギ、ニンニクも連作しても大丈夫なので連作畝として毎年同じ場所に決めてしまう。夏畝、冬畝、連作畝で考えればプランが立てやすくなると竹内さんはアドバイスします。

私の場合、家庭菜園と言いながらも畑が10キロほど離れていますし、毎日行けるわけではない(週に1回ほど、しかも自転車で行く)ので、そこでは管理が楽な作物を選びました。デンプン系(ジャガイモ、サツマイモ、カボチャなど)を中心に、それと相性のいい作物を栽培することとしています。キュウリとか毎日見てないといけなそうなものは畑ではなくて、プランターで作ることにしました。

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執筆者:有賀知道

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